君の笑顔

□27廻
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『悔いている小生が・・・・・・?』
「違うのかい?
 最も だからこそ お前は成仏出来ずにおるのだろうが」
キュッと口を固く閉ざす
 『・・・・・・当然ではありませんか
 何故小生があのお方をーーーーーー』

葉王様を
尊ぶ心
忘れらるる事
ありますでしょう

涙を流すマタムネ




暗い夜道を牛車を引きながら歩く二人の大人
「冷えますなァ」
「冷えますなァ
 しかしそれ以上に匂いますなァ」
一人の大人が鼻をクンクンと動かす
「死体が
 ひどいものだ
 貧しい民共め死体の処理が出来ぬものだから こぞって鴨川へ捨てに来よる」
鴨川が静かに流れるが川辺には大量の死体と人骨が当たり前のように捨てられている
「おまけに糞尿も外に垂れ流しおかげで疫病も流行り 街なかまで死体だらけ
 病人は外に追い出されのたれ死ぬか・・・」
「もはやそれが当然の習慣となっておるのだから世も末よ」
ヌルウーーーー・・・ッと不気味な気配が二人を包み込みビクッと反応する
「!」
後ろを見るがシン・・・ッとして誰も居ない
「まさか・・・
 出ないであろうな・・・」
「な・・・何がであろうか」
「ウワサの鬼に決まっておろう
 何しろここは・・・」
「ハハ・・・
 よしておくれやしかし仮に出たとて我らにはーーーーー」
ガタッと音をたて人骨が動き
「あアーーーーーつ」
「出たアーーつ」
二人は互いに抱き合い叫ぶ
だがその相手は一匹の猫だったがフラ・・・ッと今にも倒れそうだった
「・・・・・・・・・・・・」
「猫・・・・・・」
「おのれ猫の分際でよくも人様をおどかしてくれたなーっ!!!」
「その上 髑髏をねぐらにするとは不届き者め叩き切ってくれる!!!」
二人は脅かされた相手が一匹の猫である事に腹が立ち刀を持ち出す
「止めよ
 その小さな者とて命
 むやみに殺生をしてはならぬ」
牛車に乗っている人物はその行為を止めさせる
「しかしこのようなうすぎたない猫など」
「たいしたものではないか
 この百鬼うごめき魔界の都にただ一人死をも恐れず生きておる」
牛車から降り姿を現したのは狩衣姿の人物
猫はその人物を見て驚く
「はっ・・・」
「そなたはーーー
 親に捨てられ共に生まれた七つの兄弟も皆死に自分も疫病におかされ 残りわずかな命である事を知っている
 しかし勇敢なるその魂能力を持ちながらも鬼を億さぬその心
 どうして見捨てる事が出来ようか
 僕の妻がそなたを治す事が出来る
 そなた見えておるのであろう
 来やれ」

僕の元へ

大事そうにその猫を抱き寄せる
その人物こそ倒さねばならないハオと今葉と共に居るマタムネ

『鬼さえ恐れぬ鬼神を従えあらゆる占術とあらゆる巫術をもって世に活躍せし大陰陽師麻倉葉王と大いなる巫女佐藤柚
 あのお方達ほど心優しい方はおるまい』
再び雪が降り出した空を見ながら思い出す
「フン・・・
 優しいとよく言うよ
 現に お前だって倒したのではないか
 500年前麻倉の先祖修験者葉賢と転生を完成した佐藤柚と共に 
 パッチとして転生したハオを」
『葉王様は優しいしかしその優しさ故にその強気巫力が故に鬼に心を喰われた
 霊視
 何も見る事なく何も聞く事なく他人の心や事柄を把握してしまうその能力
 より強ければ強いほど否や応にも人の心は流れ込みその深さウラミや怨念はやがて己の心までもむしばみ遂には自ら鬼を生む
 あの平安の名にふさわしからぬ鬼哭啾々たる時代苦しむ民とその原因を作りし強欲な貴族達の権力闘争の間で葉王様の見た闇はとても計り知れまい
 奥方の柚様でさえそれを払いのける事が出来なかった』
「そして葉王はシャーマンキングを目指すか
 だがそれは優しさではない弱さだ
 確かにそこには我々なぞ想像もつかぬほどの闇があるのだろう
 だがハオが弱き己の心に負けた事に代わりはないお前もそれを承知で戦ったのではないのかマタムネ」
『無論
 小生とてその正義 今もうたがうつもりはない
 だがしかしだがしかし未だこの心大切なものを選べなかった事悔やんでおるのです』
ドンッと涙を浮かべる
『柚様とて同じ事・・・だからこそまたこの世に転生をしたのです』
「・・・・・・・・・・・・
 ま 何が正義かなんて私にもわからん事さ
 だが何が悪いのかくらいはわかっているつもりだ
 お前が何故ここへ再び戻って来たのかをよく考えろ
 一つはお前自身の決着をつけるためそしてもう一つはハオと同じ力を持つあの娘を救うため
 否が応にも人の心が見えるその能力それ故人に捨てられ人を嫌い一人になりウラミが鬼を具現化させる
 その心お前が葉の力となって開かせるのだ」
木乃の言葉がマタムネに突き刺さる



齢千余年
小生は
やっと寂しい思いから
はなれます
はかなくとも
はかなくとも











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