君の笑顔

□7廻
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「こ・・・ここが柚ちゃんの実家・・・
 あはは・・・
 なんかもうすごいよ」
まん太は柚の実家の門を見て笑う事しか出来ない
葉の家の様に大きな屋敷だった
表札にはちゃんと「佐藤」と書かれているがインターホンらしきものがない
「さて、行くかのう」
葉明は自分の家に入るかの様に門を開く
「ちょっ・・・
 勝手に入って大丈夫なんですか?」
まん太は葉明に尋ねる
「フフ・・・
 大昔からの関係じゃからの勝手に入ろうが関係はないわい」
そう言い敷地に入って行く
その後ろに葉、アンナ、まん太、阿弥陀丸が着いて行く
「でも、誰も居ねえな」
周りを見渡す葉
「まるであんたん家みたいじゃない」
アンナは気にする事無く歩いた行く

「!!!!!
 アンナ、まん太下がってろ」
葉は何かに気がつき二人を止める
「なに?」
まん太は分からない様子
「・・・・・・フッ
 ここでもあんたを試したいみたいね」
アンナは平然と足を止める

すると大量の式神が現れ葉に襲いかかる

昨日と同じで全ての式神は切り裂かれ姿を消した

するとパチパチと拍手する音が聞こえた
「「「!!!」」」
三人は後ろを振り返る
「流石 葉明の孫だけの事はあるな」
一人の老人が笑っていた
その笑顔が柚に似ていた
「久しぶりじゃな、紅葉」
「はっはっっは
 呼んでも居ないのに勝手にきおってからに」
長いひげが特徴のある老人こそ柚の祖父、佐藤紅葉
「あら
 見ないうちにこんなに大きくなられてねえ
 葉くん」
その後ろに着物を着こなした優しそうな老婆も出てきた
「?
 誰だ?」
葉の記憶には無い老婆
「まあ 
 昔の事ですから覚えていないのもおかしくはないですね」
扇子で上品に口元を隠しながら笑う
「葉
 柚の祖母、早紀じゃ
 全く、お前は何も覚えてない様じゃな」
はあとため息をつく葉明
「大体なんなんよここは!
 柚の実家だから来たのに急に式神が現れるし」
「はっはっは
 葉くんがどれほど強くなったか試したくなってのお
 まあ こんな所ではなく家の中に入ろうじゃないか」
そう言い紅葉は広い庭を歩き始めた

式神がお茶を入れる
「ここに来たのは柚の事かい?」
紅葉はお茶を飲みながら話す
「おお」
葉は返事をする
「最近は手紙も電話も無いから心配しとったがその必要はないようじゃな」
優しそうに笑う紅葉
「ここも麻倉家と同じ霊媒師なの?」
アンナは唐突に紅葉に話しかける
「葉明よ
 いい嫁ができたなあ」
笑いながら葉明を見る
「ああ 
 頼もしい」
「で、柚の事を聞きたいんだけど!」
アンナは食い下がる
「ふふふ
 そんなに睨まなくても大丈夫ですよ
 アンナちゃん」
煎餅を出しながら言う早紀
「なんであたしの名前を!」
アンナは驚く
「柚からの手紙によく書かれていたからねえ
 お姉さんみたいに優しく頼もしいとね」
ニコッと笑う
「・・・・・・」
「なあ
 なんではあんた達のところに残らなかったんだ?」
そうここにいれば虐げられる事もなく過ごせたはず
「それは・・・
 葉くんが関係しているんじゃよ」
紅葉は静かに口を開いた
「葉くんが関係してるって・・・
 どういう事?」
まん太は驚く
「一度だけ君と一緒に修行をさせたのは覚えとらんか?」
「ああ 
 全く覚えてねえ」
葉は正直に話す
葉明ははあとため息を漏らす
「まだ君はが5歳の頃の話じゃ・・・
 君は柚のオーバーソウルを見て君は幼心に言ったのだろう・・・
 「化け物」と・・・」
えっと言う表情をする葉
全く記憶に無い言葉
でも少しだけ記憶が蘇ってくる


まだ式神も出せなかった葉
葉明は同い年の子を紹介した
それが柚だった
すでに持霊として正宗がついていた
親に虐げられ町中から忌み嫌われていた柚の瞳には生気が感じられなかった
紅葉は同じ境遇の葉ならそんな柚を変えられると思って連れてきた
葉にとって初めて同じ立場にたった唯一の存在だった
でも、まだ葉は幼すぎた
柚のオーバーソウルを見た瞬間驚きつい口に出してしまった言葉
それが「化け物」
その言葉に傷つき全てのものを憎み始めた
今の様に笑う事もなく泣く事もなくただ自分を責めた
自分は異常なまでの霊力を持っていると
人とは違う人種なのだと思った
それ以来家に籠るようになり家から一歩もでなくなった

「オ・・・オイラ・・・」
思い出した幼い頃の思い出
自分も同じ境遇だったのにも関わらずに出してしまった言葉
嫌な汗が流れる
「じゃが そんな柚を救ったのも葉くんきみなんじゃよ」
柚と似たように笑う紅葉
「え?」
バッと紅葉を見る葉
「きみは一度この家に葉明と共に来て柚に言ったんじゃよ
 「笑っていればなんとかなる」とね
 化け物と言った事を詫びてくれた
 それ以来、少しずつでもあるが笑うようになった きみの一言でのう」
「・・・オイラは・・・そんな事を?」
自分で驚く
「ああ そうじゃよ
 今でも笑っておるかい柚は?」
「うん
 どんなに辛くても笑ってるんだ・・・
 痛くても悲しくても泣きたくても」
ファウストの時自分も痛いはずなのに笑っている柚を思い出した
「そうか
 柚が東京に行ったのは自分の意志でこの家を出て行き今の家に行った
 どんなに虐げられ様が笑っているば平気と言ってなあ」
ふふふと笑う紅葉
「柚もそんな事はもう覚えとらんはずじゃ
 きみ達という友達が出来たのじゃからな」
「あんたもよく言ったもんね」
アンナは出された煎餅をバリッとかじる
「オイラ・・・ちゃんと謝らんとな・・・」
決心した表情をする
「はっはっは
 そんなに気張らなくとも平気じゃよ
 今はまた新しい友達と居るみたいだしのお」
「新しい友達?」
まん太は不思議に思う
「まあ 葉くん気にする事はない
 きみはきみのままでいい
 君の口癖の「なんとかなるは柚を救った一言でもあるのだから」
優しく笑う
「佐藤家は例えて言えば闇じゃ
 そして麻倉家は光」
「どういう意味?」
「簡単に言えば時代が流れシャーマンの力など必要とされなくなったこの時代
 麻倉家の後ろには佐藤がついておる
 何かがあればこちらに目がつく・・・
 時代は変わって行くもの」
葉明は少し暗い顔をする
「麻倉家が何かをしでかせば全て佐藤にいくと言う事じゃ」
葉明は静かに口を開く
「それが時代の流れじゃよ 葉明」







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