過去拍手SS

□いつもの光景
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ボクはいつも兄さんの後ろを歩いてる。

別に意識して後ろになっている訳じゃないけど、ボクが鎧になってからはだんだんとそれがいつもの光景になってきたような気がする。
ほら、兄さんってせっかちだから。ボクの方が歩幅が広いはずなんだけど。ね、今だってボクの前をずんずん歩いてる。
兄は今日読んだ本のことを考えているらしく、口数少なくただ道をどんどん進んでいる。自分の手帳を見てはぶつぶつと何事かを呟いて、周りの人に変な目で見られそうだ。一方、アルはそんな時の兄に話しかけないほうがいいだろうと思って話しかけられずにいた。
無言で歩く道はなんとなくつまらない。

兄さん、ボクがこのまま後ろをついて行かなくても気づかないんだろうなぁとふと思う。何か考え事をしている兄に周りは見えていないだろうから。
ちょっと止まってみようかな。自分の心に悪戯心が芽生えたのを感じた。
よぉ〜し。

ボクは足を止めた。



「アル?」
「へ?」


自分が止まったと同時に兄も止まる。しかも後ろ向きで名前を呼ばれた。
な、なんでわかったんだろう…。気づかずにすたすた行っちゃうと思ったのに。

「どうしたんだよ」
「え、あ、べ、別に」
「…なんかあった?」
「ううん!何でもない!」
「…ははぁ、長旅でアル君は疲れちゃったんだな」
「え」

ほら、と差し出された兄さんの手。わけも分からずぼんやり見つめてると向こうからボクの手を握ってきた。

「もう少しで今日泊まるとこにつくから、もうちっと我慢しろよ」
「う、うん」

こんなはずじゃなかったんだけど。それに兄さん、鎧は疲れません。

でも…なんかすっごく嬉しかった。おかしいなぁ。





おててつないで、どこまでも




★小さい頃はもちろん、大きくなっても手をつないで歩いてもらいたいですvv(茶亜)


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