月の詠

□旅
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「ごめん」という言葉を僕は言えなかった
いつも言葉が喉に絡み付いて
声にならずただ君を見つめていた
後悔してももう遅いのに
不器用な僕を必要としてくれた君だから
傷付けたくなかったのに
いつからこんなに不器用になってしまったのかな
僕の心をありのまま君に伝えたいのに
言葉が出てこないんだ
こんなに言葉を知っているのに
役に立たないなんて
何も言わずに笑いかけたら
月のように静かな微笑みを返してくれたね
「気にするなよ」
そんな君の声が聞こえた気がした


想いはきっと届く そう信じていた
信じることしか出来ない僕だから
すれ違う心の何処かで ずっと
君の影を追いかけてたんだ
迷って立ち止まっていた僕に居場所をくれた君だから
失いたくないと願ったよ
完璧な人間なんていないんだって言ったね
だから君の肩を借りながら進んでいくよ
静かに君は頷いて
優しく手を差し伸べてくれた
それがとても嬉しくて
力強くその手を握ったら
夕陽に染まった双眸を眩しそうに細めたね
「信じているよ」
そんな君の声が聞こえた気がした



この声よ 君に届け
孤独に押しつぶされそうになる心に
君の声は暖かく僕の心に染み込んでいったよ
「ありがとう」今度はちゃんと言えるようにしておくから
だからもう少しだけ待って
そうしたら君の後を追うから
僕達は風の旅人

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