月の詠

□淡
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「初めて会ったのは何時(いつ)だったかな」
何気ない問いかけに貴女は笑って
出逢った時を思い出せない程、永い時が経ったのね、と
貴女から顔を背けて
涙を堪えるのが精一杯だった
長い長い時間一緒にいても
僕は貴女の「特別」にはなれない
この想いは貴女には届かないと
本当はずっとずっと前からわかっていたけど
気付かないふりをしていた
友達でいいから 傍にいさせて
貴女のその笑顔を
僕はずっと守っていくから


「気付いてあげられなくてごめんね」
貴女の笑顔は泣き顔に似ていて
その言葉だけは貴女の口からは聞きたくなかった
伸ばした手は届かない
ここから近付く事も許されず
足にはめられた枷が高い音を立て
叶わぬ願いに足掻く僕を嘲笑う
この思いは貴女には届かないと
どうしても気付かなければならなくて
それは終焉の鐘の音(サイン)
友達でいいと 思っていたのに
貴女のその輝く笑顔が
本当はとても哀しかった

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