並盛中学 校歌第2番
□私の先生
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『面取り・・???』
本屋で本を食い入るように見ながらブツブツ呟く一人の少女がいた。
名無しさんである。
裏社会では天才と重宝され、学校ではアイドル的存在になりつつあるその少女は料理の本のコーナーで眉間に皺を寄せながら真剣な様子で本と格闘している。
学問の本ならもう何冊も、何万冊も熟読している名無しさんだが至って料理の本は名無しさんにとって珍しい資料だった。
『はぁ・・;やっぱり日本料理は奥が深い・・・』
周りを気にしない大きな独り言に周りがクスクスと笑い注目を浴びていたが気付いていない名無しさんは本に感心した言葉ばかりを漏らす。
(何にしようかなぁ・・。)
次の日曜日に雲雀とデートの約束をしている名無しさんはお弁当計画を考えていた。
雲雀が和食好きという事を知った名無しさんはしきりに和食の本を読んでいる。
作るんなら大成功に納めたい。
悩む名無しさんの後ろで突然声が上がった。
「Σイテテテッ;!」
『!?』
驚いた名無しさんが振り返るとそこには中年の男とその男の腕を締め上げる女性がいた。
「許せないわね。いたいけな女の子のスカートの中を覗くなんて。」
『え!?』
見るとその男は手に小さな鏡を持っている。
『うわっ!!//』
慌てて名無しさんはスカートを抑えて顔を真っ赤にする。
持っていた本はバサッと音を立てて床に落ちた。
「す、すいませんでしたぁ〜!!;」
男は腕を開放されると一目散に逃げて行った。
『あ、あの・・』
「もう大丈夫よ。・・嫌な奴ね。」
そう言うとその女性はニッコリ笑う。
『ありがとうございました!!私本に夢中で全然気付かなくて・・;』
「いいのよ!ここは本屋なんだから本に夢中になっても貴方は間違ってないわ♪悪いのは全面的にさっきの人!」
「ねっ♪」とその女性はウインクする。
名無しさんはその笑顔に安心してしまう。
・・・綺麗な人だなぁ・・
着物がすごく似合ってる・・
名無しさんはその美しい人に釘付けだった。
その女性は30代半ばといった具合で着物をシャンと着こなし黒く艶のある黒髪を綺麗に纏めている。
行動一つ一つが丁寧で一瞬で名無しさんの憧れの人になってしまった。
「お料理好きなの?」
その女性は名無しさんが落とした本を拾いながら優しく尋ねる。
『あ、ハイ!!今和食の勉強中で・・』
「そうなの。若いのに偉いわね!」
優しく言われて名無しさんは照れてしまう。
穏やかな空気が流れる中バタバタと二人に近付く足音が聞こえる。
客の誰かから痴漢の事を聞いた店員が走ってきた。
「お客様!!大丈夫でしたか!?」
『はい!この方に助けてもらって・・』
「痴漢した人なら慌てて走っていったわよ。」
「そうですか;当店でこんな事があって申し訳ございませんでした!;」
『Σい、いえ!そんな!!貴方のせいじゃないから・・それに私はなんともないから気にしないで下さいね♪』
気を使わせないように名無しさんが微笑むと店員は若干顔を赤らめて何度も頭を下げる。
「あらあら・・随分騒ぎになっちゃったみたいね・・・」
『え?』
その女性ののんびりした一言に名無しさんは周りを見て驚いた。
ずば抜けて可愛い少女に店員が大きい声で平謝りしているので3人を囲んで人だかりが出来ていた。
「ねぇ。ここじゃ落ち着かない今から良かったらお茶でも飲まない?御馳走するわ♪」
そう言うと女性は名無しさんの手を引っ張る。
『そんな;!悪いです!!』
しかし女性は飛び切りの笑顔で名無しさんを引っ張っていった。
「おばさん、可愛い子大好きなの♪」