並盛中学 校歌第1番
□変化の予感
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広く綺麗に整理された部屋で一人の少女がベットに腰掛けながら不安気な表情で窓の外の月を見ていた。
「名無しさん、出発は明日だよ。もう休みなさい。」
『うん。』
そう言って扉を閉めようとした老人を止める。
『おじいちゃん!』
「どうしたんだい?」
『・・・私・・・このままじゃ駄目?』
「名無しさん?」
『思い出さずに・・・このままおじいちゃんと静かに暮らしちゃ・・・って
・・・・・・ごめんね。おじいちゃんの部下の人たちいっぱいケガしたのに・・・』
「名無しさん・・・」
一度部屋から出ようとしていたボンゴレ9代目はまた部屋へと戻り不安そうに泣きそうに俯く少女に近づくとそっと抱きしめた。
「名無しさん。間違わないでおくれ。お前がここに居ては迷惑だからという理由で日本に向かわすんじゃないんだよ。
お前は今消えている記憶を思い出そうとしている。
・・・体調が悪いのはその拒絶反応だったんだ。・・・こことは別にね。」
そう言って触れこそしないが
名無しさんの胸を指差す。
『拒絶?』
「ああ。だからこのまま拒絶が続き思い出さないならそれでいい。
だが思い出すのであれば・・・私の信頼する10代目とリボーンのいる日本でと思っている。
それがいい環境だという私の直感だ。
・・・それに日本は君の故郷だしね。」
『故郷』
名無しさんは自然と自分の黒い髪へと手を伸ばす。
記憶にはないけど・・・
私の故郷・・・
「ここも侵入されては安全ではないしね。」
『おじいちゃん・・・。』
名無しさんは縋るように抱きついた。
『なんだか怖い。・・・故郷でも私の知ってる人いないもん。
私の知ってる人はみんなここに・・・イタリアにいるもん!』
9代目は優しい手付きで安心させるように髪を撫でる。
「名無しさん。私は君を預かるようになって本当の孫のように思ってる。
・・・辛くなったら帰っておいで。」
9代目の言葉にゆっくり顔をあげる。
不安な気持ちを隠しきれず・・・。
でも9代目の心遣いが身に染みる。
『おじいちゃん・・・ありがと』
君はいまから辛い目に合うだろう。
それを一緒に分かち合える家族(ファミリー)を見つけておいで。
私の直感は当たるんだよ・・・。