黒曜中学 文化祭
□チョコレートに愛を乗せて
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2月13日・・・。
その日犬と千種は学校から帰るなり家中に漂う甘い香りと、聞こえてくる機嫌のいい鼻歌で同時に溜息をついた。
「柿ピー・・・。骸さん、学校休んれ何してんの?」
「・・・知らない・・・。」
二人は重い足取りで中へと入っていった。
「〜気付かせてあげますよ♪君の〜♪・・・おや、帰ったんですか?犬、千種。」
「(柿ピー・・・何今の歌・・・?;)」
「(・・・知らない。・・・)」
ニコニコしたまま骸はキッチンから出てくる。
エプロン姿の骸を見て二人はまた溜息をついた。
「骸さん・・・;学校にも行かず何してんれすか?」
「Σ犬・・・!まさか・・明日が何の日か知らないんですか・・!?」
「え;!?」
骸はエプロンを外して犬が寝転ぶソファーに腰掛けると真剣な顔で話す。
あまりに真剣な様子だったので犬も千種も姿勢を正してしまう。
「明日はバレンタインデーですよ!!!」
「「・・・・・・・・・・・・」」
「もう明日です!!準備は念入りにしませんと・・・・。」
「「・・・・・・・・・・・・」」
熱を込めて話す骸だが対する二人の目はだんだん冷めていく。
「骸様・・・。」
「はい?なんですか?♪」
またキッチンへと入っていった骸の機嫌にいい声がする。
「骸さん。バレンタインって・・・女が男に送るんれすよ・・?;」
しかし骸は気にせず鼻歌を歌っている。
「・・・犬。もういいよ・・めんどい・・・・」
「・・柿ピーじゃねぇけど・・・オレもめんどいびょん・・・」
主人のご乱心に呆れながら二人はテレビを付けてもう何も考えないようにした
♪♪
「ん?・・・あ、名無しさんだ・・!」
犬は自分の携帯を鞄から取り出すと嬉しそうにボタンを押す。
「名無しさん!!ろうしたの!?」
『犬ちゃん!前に犬ちゃんと雑誌で見てたDVD手に入れたの!!!今から一緒に見よ!!』
嬉しそうな名無しさんの声に犬は自然と顔がにやける。
「ラッキー♪すんごいそれ見たかったんらぁ!!今から見・・、ん?何?柿ピー?・・・・・はっ;Σ!!」
テンション高く犬が返事をしようとしたら千種に服を引っ張られたので犬は笑顔のまま振り返った。
視線の先にいたのはキッチンから顔を出し強く睨む骸がいた。
手にはチョコの付いたゴムベラが握られている。
『犬ちゃん?どうしたの??・・ねぇ今からお家に行っていい?』
「Σえ、えーっと;その・・」
(名無しさんと遊びたいぃ〜!!)
しかし骸はずっと睨んでいる。
『ごめんね;もしかして都合悪かった・・?』
名無しさんの申し訳なさそうな声に犬は余計に焦ってしまう。
「いや、ちがうくて・・Σひっ!!」
『犬ちゃん!?』
犬の突然の小さな悲鳴に名無しさんも焦る。
「ご、ごめん!オレ今日都合悪いんら!!!ホントにごめん!!!」
『け、犬ちゃ[ブツ]』
犬は勢いよく電話を切る。
そぉーと骸に目をやると骸は満面の笑みで犬を褒める。
「クフフ。犬はいい子ですね♪」
(だって骸さん、目が[四]になってたんらもん!!;)
膝を抱えて涙ぐむ犬にさすがの千種も同情して頭をポンポンと叩くのだった。