並盛中学 文化祭

□二人の日曜日
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「こんな種が入ってるんだ・・」



『そう♪大きいでしょ?』





ここは名無しさんの自宅のキッチン。



以前約束していたパスタを雲雀にご馳走するために名無しさんはアボカドを手に奮闘していた。



穏やかな日曜の昼




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『恭弥はリビングで待ってていいよ?』



「いいよ。見てるの楽しいし」




なんて言う雲雀は単に名無しさんから離れたくないだけだったりする。



『そう?恭弥もお料理好きなんだ♪』と真意も分からず名無しさんは無邪気に笑っていた。



雲雀はカウンター式になっているキッチンで頬杖をついてそんな名無しさんを優しく微笑みながら眺めていた。




『恭弥、嫌いなものとかない?』



「・・鍋。バーベキューとか」



『?・・お肉嫌い?』



ハンバーグが好きな雲雀だったので不思議に思った名無しさん。



「・・・群れて食べなくちゃならない料理は嫌い」




『・・・なるほど;』



苦笑いをしながら名無しさんはアボカドを切り終わるとボウルに移しクリームチーズを入れディップを作る為に丁寧に混ぜ始めた。




『恭弥って一人でサヨさんのいない時にお腹空いたらどうするの?』



「ん?・・・名無しさんにお願いする。名無しさんの料理好きだから」



『//そ、そうじゃなくって;!・・・イヤ!!別に全然構わないんだけどね・・。』




聞きたい事が上手く伝わらず名無しさんは少し照れながら困る。


もちろん雲雀はワザとその顔が見たくてそう答えた訳で・・・



想像通りの名無しさんの表情にクスッと笑う。





「簡単な物なら作るよ。一応冷蔵庫の補充もサヨには頼んでるから」




サヨとは一人暮らしをする雲雀の家に食事や家事を担当している雲雀家のお手伝いである。

もちろん手配させたのは雲雀の母、弥生であった。



雲雀の小さい頃から遣えていた事から経験深く高齢で穏やかなの人柄の彼女は雲雀の意志を尊重した働きを見せている。


だから雲雀もサヨなら自分の生活に干渉してもいいと承諾した。




『恭弥料理出来るの!?』



「うん。・・・この前の子どもの君にも作ったよ」



『Σえ!!・・・ずるい・・・』




自分に作って貰った訳だがそれは10年前の自分で名無しさんはそれがとても残念に感じた。


自分に嫉妬している名無しさんに雲雀はつい可笑しくて可愛くて笑ってしまう。



少し唇を突き出して無意識に拗ねている名無しさんに手を伸ばし頭を撫でる。




「今度作ってあげるよ♪」



『本当!!?』



「うん」




『やったぁー♪』




本当に嬉しそうに名無しさんが微笑むので雲雀は穏やかな気持ちでまた微笑んだ。



『そっか・・。携帯に取った写真のオムライス、恭弥が作ったんだね♪』






嬉しそうに名無しさんは手際良く料理を進めていく。










本当に可愛い。



キッチンに立つ名無しさんは学校も休みだからと細いジーンズに淡いブルーのチュニックとラフな普段着にシンプルなグレイのエプロンをして髪は料理の邪魔にならない様に一つに纏められていた。



いつもはどうしてもその童顔から幼く見えてしまう名無しさんも料理をしていると少し大人びて見える。



しかし時々味見をして嬉しそうに納得して笑う名無しさんはやはり可愛い。





雲雀はまるで自分が親になったかのような錯覚に陥る。


無性に名無しさんの可愛さを誰彼構わず自慢したくなってしまうのだった。





・・・もちろんそんな勿体無い事しないけどね・・




『ん!クリームチーズがいい感じ!!恭弥も食べてみる?』



「うん」





名無しさんはスプーンに軽く作ったアボカドとクリームチーズ、そしてスモークサーモンを混ぜ合わせたディップを掬うと手を添えて雲雀に差し出した。



『ハイ、あーん♪』





それに素直に雲雀は小さく口を開け受け入れる。



「・・・うん。美味しい」



『良かった♪』






十分に味わってから雲雀は少し笑って名無しさんの料理を褒める。





・・・恭弥・・、可愛い♪





出されたスプーンに素直に口を開ける雲雀に名無しさんは名無しさんで母親になったかの様な錯覚を覚える。


その後の屈託のない雲雀の微笑みに決して人には見せず自分にしか見せないそんな笑顔が嬉しくて優越感があった。





ピピピ・・とパスタの茹で上がりを知らせるキッチンタイマーの音がした。
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