屋上

□閉塞
2ページ/3ページ




そんな無理が、長く続く筈なんかないのに。





「いいんじゃない?毛先だけで。今の髪型似合ってるし」



だけど僕はそれを言わない。

不変に執着する人間を、わざわざ変える必要性なんて見つからないから。





どうぞしたい事を、お好きなように?






「そうだよね!今のままでいいよねっ♪」


さっきの表情とは打って変わって、花が咲くように、都は笑う。




空は相変わらずの曇り空で、少し暗くなってきた雨雲のせいか、じわじわと視界が狭くなていくように感じた。



校則だらけの、ウンザリさせられる学校という存在のように。
数え切れない程の生徒や教師を、詰め込めるだけ詰め込んだ白い校舎のように。
広く、広く、僕らを閉じこめる空のように。


ゆっくり、確実に。
僕は都の視界を奪っていく。


単純で甘い、都合のいい言葉で都の世界を閉じこめる。



「………」


口の端が上がりそうになるのを感じて、タバコをくわえた。



引き返せなくなるまで続けよう。
そうなった時の、都の顔が見てみたい。


それは純粋な興味。



知りたいのは、昔見た笑顔。

あの時…もう此処にはいない少女が笑った、本当の理由。





キーンコーンカーンコーン
キーンコーンカーンコーン




不意に耳へ届いたチャイムの音で、僕の思考は現実に戻る。


「ありゃりゃ。鳴っちゃったよ。次数学だよ。ヤだなぁ」

「…ならサボれば?」

「うーん、でも行くよ。先生は嫌いじゃないんだよ」

「そっ」

「雅人は?」

「午後からは出るよ」

「はいなっ♪じゃーまたね雅人」

「ん。またな都」



パタパタと。
やたら手足の長いウサギのぬいぐるみを抱えて、都は教室へと向かっていった。

祐司も今頃授業中だろう。


僕らは3人とも別々のクラスだから、お互いの時間割は一緒じゃない。
多分、僕のクラスは現国だったと思うけど……


「………めんど…」


無気力な体で、立ち上がる事さえ面倒臭くて。
起き上がるのは、やはり1時間後にしようと決めた。


 
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ