屋上
□閉塞
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そんな無理が、長く続く筈なんかないのに。
「いいんじゃない?毛先だけで。今の髪型似合ってるし」
だけど僕はそれを言わない。
不変に執着する人間を、わざわざ変える必要性なんて見つからないから。
どうぞしたい事を、お好きなように?
「そうだよね!今のままでいいよねっ♪」
さっきの表情とは打って変わって、花が咲くように、都は笑う。
空は相変わらずの曇り空で、少し暗くなってきた雨雲のせいか、じわじわと視界が狭くなていくように感じた。
校則だらけの、ウンザリさせられる学校という存在のように。
数え切れない程の生徒や教師を、詰め込めるだけ詰め込んだ白い校舎のように。
広く、広く、僕らを閉じこめる空のように。
ゆっくり、確実に。
僕は都の視界を奪っていく。
単純で甘い、都合のいい言葉で都の世界を閉じこめる。
「………」
口の端が上がりそうになるのを感じて、タバコをくわえた。
引き返せなくなるまで続けよう。
そうなった時の、都の顔が見てみたい。
それは純粋な興味。
知りたいのは、昔見た笑顔。
あの時…もう此処にはいない少女が笑った、本当の理由。
キーンコーンカーンコーン
キーンコーンカーンコーン
不意に耳へ届いたチャイムの音で、僕の思考は現実に戻る。
「ありゃりゃ。鳴っちゃったよ。次数学だよ。ヤだなぁ」
「…ならサボれば?」
「うーん、でも行くよ。先生は嫌いじゃないんだよ」
「そっ」
「雅人は?」
「午後からは出るよ」
「はいなっ♪じゃーまたね雅人」
「ん。またな都」
パタパタと。
やたら手足の長いウサギのぬいぐるみを抱えて、都は教室へと向かっていった。
祐司も今頃授業中だろう。
僕らは3人とも別々のクラスだから、お互いの時間割は一緒じゃない。
多分、僕のクラスは現国だったと思うけど……
「………めんど…」
無気力な体で、立ち上がる事さえ面倒臭くて。
起き上がるのは、やはり1時間後にしようと決めた。