屋上
□此処
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時々、思う。
「“連れてくる”だよ」
私の視力が、自分の半径1メートル以内しか見えないようになっていたらいいのに。
「そんで一人で話しかけんの?」
「お友達とお喋りして何が悪いのさ」
雅人が少し呆れたような顔をした。
言いたい事はわかるんだ。
そんなんだからクラスにとけ込めないんだよ、って。
そう言う事でしょ?
「いいんだよ」
でも、いいんだ。
このままで。
だって……
だってそしたら、私は私の世界に閉じこもっていられるでしょ?
変わりたいなんて思わない。
世界を知ろうとも思わない。
このままで、いいよ。
「都」
不意に、雅人が口を開いた。
「制服、似合ってんじゃん」
火のついた煙草を片手に、笑う。
「っ……」
何でか胸がギュウってなって、泣きそうな気持ちになった。
「ありがと。雅人も」
こんな幸せな場所を守っていられるなら、私はきっとなんだってするから。