脳内風景
□カノジョ
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僕は彼女が、実はアンドロイドであったと言われても驚かなかっただろう。実は天使だっとか?未来からやってきた未来人ですとか?あるいは宇宙人だったとか。
とにかく“人間以外の何か”であればなんでもいい。僕はソレを迷わず信用するだろう。
あーあ、やっぱり。
こんな感じで。
だけど驚いた事に彼女は何故か人間で、普通にトラックに跳ねられて、普通に死んでしまったのだ。
相変わらずの無表情で、僕の無茶な願いを聞き届けて。
僕はただ、一度でいいから…君に反抗して欲しかったんだ。
君は人間なのだと、僕に信じさせて欲しかった。
だけど君は、結局ただのロボットだったね。
君は最後の最後まで自分の意志を持てなかった。
君は自分の異常さに気づいていたかい?
小説を書いた時、もう終わっている本の続きを予想して書いたと言っていたね?そんな予想なんて何千何百とある筈なのに、僕は君の書いた結末以外には有り得ないと思ったよ。
何故って、ソレが一番自然な成り行きで、ソレが一番その本の作者らしく、ソレが一番完璧だったからさ。周りの状況も、キャラクターの性格も、作者の意図も、心理も、書き方の癖でさえも、完璧だった。
でも君は、自分で考えて何かを書く事が出来なかった。
絵を描いた時。
君は何故か抽象画だけは描けなかったね?水彩も、油絵も、パステルも、デッサンも全て素晴らしい芸術品だった。遠い記憶の風景も、今すれ違っただけの人間も、正確に、どんな技法でも問わずに描き上げた。もちろん模写だって、本物より上手いのではないかと思える程の腕前だ。
だけど君は、自分の中から何かを作り上げることが出来なかった。“想像”するという事が、どうしても出来なかったんだ。
なぁ?
ソレは本当に人間か?
人間は想像する事ができる。イメージをすることが出来る。何かを創り出す事が出来る。やりたい事がある。好きな事がある。
それが人間だろう?
君は一体何だったんだ?
いや。
コレはただの言い訳かもしれない。
僕には何も出来なかったから。