屋上

□狂信
1ページ/4ページ

side:紗耶香







明らかに順位を落とした成績表の数値は、死刑宣告のようだった。


どうしよう。
どうしよう?

嫌われる。
見捨てられる。
呆れられる。
見限られる。


どうしよう。
怖い。

こわいこわいこわいこわい。
なんとかしなきゃ。

ああ、まただ。

最近思考が上手く働かない。
小さな子供のように、一つの事以外考えられない。
ひどく狭い思考に浸っている気がする。でも周りを見渡せる余裕がない。


「行こうか」


だからそう掛けられた声に、何の疑いもなく頷いた。
それが最後へ向かう声だと、どこかで気づいていた筈なのに。
他に縋るものなんて何もなくて。
ただひたすらに助けて欲しくて。

自分が小さな子供になってしまったような錯覚に、逆らう事が出来なかった。

いっそのこと本当に、そうなってしまえばいいのに。
悩むことも、苦しむこともないくらい、馬鹿になってしまえばいい。
何も考えられなくなればいいのに。






「……………」







無造作に捨てられたタバコの煙が、ゆらゆらと頼りなく空へ向かっていた。

















『貴女のためなのよ』

―――私に恥をかかせないで

『こんな事も出来ないの?』

―――落ちこぼれな子供なんていらないの

『幸せになって欲しいのよ』

―――誰より幸せになりたいのよ






 
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ