屋上
□遊惰
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side 雅人
報われない魂に救済を。
歪んだ思想に安息を。
壊れた心に終焉を。
狂った願いを叶える事なんて、馬鹿みたいに簡単。
なのにまるでそれは重苦しく不確かで、どう足掻いても解きようのない難題を突きつけられたかのように難しい顔をして悩む他人の方が、僕には不思議で仕方ない。
「どうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう…」
蒸し暑い晴れた日。
いつものように行き慣れている寂れた公園に入ると、その優等生はこの世の終わりのように絶望的な顔をして座り込んでいた。
「紗耶香?」
びくんっ、と。大きく肩を揺らしておずおずと僕を見上げた彼女の顔は真っ青だ。
「ま…まさ、と?」
その表情をお構いなしに、紗耶香の隣に座り込んで煙草を取り出す。
思い詰めたような顔をした紗耶香は、僕が煙草に火をつけ、一息つくのを無言のままで見守っていた。
「……成績?」
何気なく尋ねた言葉に眉を下げる反応で、青い顔の原因が容易に知れる。
紗耶香がここまで落ち込む原因なんて、親か成績か以外に有り得ないのだ。
………酷く、狭い。
たとえ頭上に広がる空が無限のように広くとも、僕らの生きる世界はどうしようもなく狭いのだ。
疑問や困難に迷走して。
苦痛や悔恨に困惑して。
自嘲と嘲笑に憔悴する。
失えば生きていけない程に、手に持つ物も少なくて。
死を望む以外の逃げ場所なんか考え付かない程、行き着くべき場所がどこにもない。
「どう、しよう…」
閉じこめられた出口のない迷路の中で、人が考えられる最終的な終着地点は……結局全てを放棄する事にしかないのだ。
馬鹿馬鹿しいね。
「雅人、私ね……最近本当に集中できなくて。何もかも手につかなくて……上手く…何かを、考えることさえ難しい」
自分以上に大事なものなんて、ある筈ないのに。
「いつから、こんなふうになったんだろう?どうして、こんなふうになったんだろう?…怖いよ……」