屋上
□邂逅
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side 祐司
「雅人は?」
「来て早々ソレはないんじゃない?祐司ぃ」
屋上のドアを開け、一通り周りを見渡した後の俺の言葉は、速攻で都に一蹴された。
この分なら雅人はまだここに来てはいないのだろう。学校自体には来ていた筈だけど…帰ったのか?
雅人は気まぐれだから毎日ここに顔を出す訳ではないけれど、ソレにしたって最近は放課後にくる比率が下がっている気がする。
「都」
「なに?」
「最近雅人、あんまココに来なくない?」
「…だね」
俺達の居場所は「屋上」じゃない。
「雅人」がいる場所だ。
相変わらず酷い依存だってのはわかってる。
だけど俺は…
「イヤな予感がするなぁ…」
「都?」
「だって、何となくだけど」
「何となく?」
「雅人…ちょっと楽しそう……」
楽しそう。
何に対しても無感動無表情で自分の生き死にすら興味なさそうな、あの雅人が。
「ソレは確かに不吉だな」
「ね」
だって雅人が興味を持つ事と言えば、大体知れてる。
どこか歪んでいる人間に会った時。
どこか壊れそうな人間に会った時。
どこか欠けた人間を見つけた時。
俺達のように。
「良くて俺達の仲間が増えるか」
「悪くてどこかに死人がでるか、だね」
雅人が関わるという事は、そういう事なのだ。
「………」
「………」
俺達はまだ死んでないけど。
きっと雅人に切り捨てられたら生きていけない。
都も、俺も。
雅人が全てだから。
無感動で無表情で、残酷な神様。
他人が嫌いで、世界が怖くて、そんな俺にも平等に無関心で居てくれた神様。
雅人には中途半端な同情も、くだらない嘲笑もない。
どんなに近くに行ったって、雅人は俺なんか見てないようにさえ思える。
その俺を映さない眼に救われたなんて、バカみたいだ。
こんなの歪んでる。
そんな事わかってる。
だけど無遠慮な他人の視線が、ずっとずっと怖かった。
俺の映らない瞳に酷く安心した。
都だってきっと、似たような仲間だ。