屋上

□絶望
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side 紗耶香








“死ね”

と、軽々しく書かれたノートを1ページ破りとる。

今更1ページや2ページ捨てたところで、私のノートが使える程に復活する訳ではないけれど。


糊で接着され1ページも開かなくなった教科書。
隙間なく落書きされたノートや机。

こんなに手間のかかる事をマメにしてくるのだから、きっとみんな暇なんだろう。



それか、みんな相当私が嫌いなのか。




「…………」







西ヶ丘女学院。

どこかの有名なデザイナーがデザインしたらしい凝った形の制服は、清楚なお嬢様をイメージして作られたらしいけれど。



「…馬鹿みたい」



着ている人間の心の中は、到底“清楚”とは言いがたい。





ビリ、と。
音を立てて、もう一枚ノートを破る。





家には帰りたくない。
かと言って学校にもいられない。



どこへ行っていいのかも分からなくて、結局大した遊具もない公園で無為な時間を過ごしていた。


独りぼっちで。
何の用もなく寂れた公園のベンチに座り込んで、

…私は一体何をしてるんだろう。







「あーあ」





虚しい。












『もっと上の順位へ行きなさい』

『友達なんか作らなくていいの』

『遊びなんて後で良いでしょう?』

『片親だからって馬鹿にされないように』

『もっと勉強しなさい』

『もっと』

『もっと』

『もっと』

『もっと……』












うんざりだ。






「…っ……」




お母さん。

馬鹿にされない生き方って何ですか?



勉強して勉強して勉強して、
それ以外私には何もなくて。

学年で1番をとって。
有名な進学校に入学して。
そこでまた成績を上げて。
同級生に妬まれて。



いつになったら終わりますか?





 
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