屋上

□閉塞
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side 雅人







コツ、という音に乗せて、僕は少し仰け反らせた首をフェンスへ当てる。


座り込んだ屋上の空気は生暖かくて気持ち悪い。
タバコの煙がゆらゆらと揺れて、視界まで白がまとわりつくようだった。




「あぁっ、髪傷んでる!」


見上げてみてもスッキリしない曇り空。
五月も半ばに差し掛かり、そろそろ梅雨時になるのだろうか。
雲に覆われた白い空を見上げる僕の横で、都はそう呟いた。



詰まるところ、学校なんて場所はどこも同じで。
校舎があって、教師がいて、生徒がいて、校則がある。

初めから馴染む気もない僕達の生活は、一週間も経たないうちに中学の時と変わらないスタイルが定着していた。



普段は何となく授業にでて、気が乗らなければ雨であっても屋上に向かう。

特に約束がある訳でもなく規則性がある訳でもないこの空間で、3人が揃うのは運みたいなものだ。



と言っっても揃う確率がそんなに低い訳ではないけれど。






「何でこんなに傷むのかなぁ?祐司は染めててもあんま傷まないのに」

「髪質の違い」

「だよねー」



僕が言うと、都はケラケラと隣で笑った。


「祐司は授業かなぁ?私、英語きらーい」


現在、他の生徒達は真面目に授業の真っ最中。
何となく朝からここにいる僕に時間の感覚はあまりないが、多分3時間目のあたりだろう。

都のクラスは今英語の時間らしい。

都は左手でウサギのぬいぐるみを撫でながら、右手の指先でくるくると長めの毛先を指に絡める。



「切れば?」

「んー…、毛先だけ切ろうかなぁ」


躊躇う表情とともに髪の毛から指を離し、都は笑った。

逃げるように髪の毛から視線を逸らして、ぬいぐるみを抱き締める。





「……………」




髪を切りたくない理由は知っている。



変化を酷く嫌う都は、外見でさえ変えたくないのだ。



目を閉じて、耳を塞いで。
伸びてゆく髪も身長も、増えて続けていく知識も無視して。








ただ閉じ籠もっていたいのだ。










「………」


 
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