屋上
□開始
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side 雅人
「卒業…か」
晴れやかな青空を見上げて、砂川都は呟いた。
その小さな腕には、大きな熊のぬいぐるみが抱かれている。
「そんな感慨深いもんでもないだろ?俺ら三人とも同じ高校なんだし」
そう答えたのは有賀祐司。
派手な赤茶に髪を染め、チャラチャラとピアスをあけた男子生徒だ。
「なぁ?雅人」
「は?」
フー、と。
白い煙を吐き出し、空を見上げていた僕は祐司の台詞を聞き返す。
「聞いてろっつーの!ったく。俺らが誰に合わせて志望校選らんだと思ってんだよ」
「さぁ?」
僕は一言だけ呟いて、また大してウマくもない煙草を口にくわえた。
「……」
「まぁまぁ祐司。それはウチらが勝手にやった事じゃん?雅人は関係ないんだからさ」
「…………いいけどね。別に」
祐司は呆れたようにため息をついて、僕の横に座り込む。
「俺にも頂戴」
「ん」
「あー!二人して煙草なんか吸ってぇ!!ガンになるよっ!」
祐司は僕から煙草を受け取り、都は僕ら二人の顔を見合わせて不満をこぼした。