脳内風景

□鈴
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僕の彼女はもうすぐ死ぬ…らしい。
子供の頃から心臓が悪く、むしろここまで生きた事が奇跡に近い…らしい。
何故“らしい”なのかといえば、それは僕が彼女と最近付き合い始めたばかりだという理由もあり、そうであるにも関わらず彼女とはまるで会って間もない様な、いわゆるよそよそしさとか、警戒心とか、不信感といった感情が全く芽生えず、まるで生まれた時から当然の様に寄り添っていたが如く親しみを感じているが故の違和感もあり、『死』というその一言があまりに彼女とかけ離れているというせいもあり、彼女というフィルターを通すと、何故か何もかもが曖昧になったり、軽くなったりするせいで現実味がなくなってしまうという理由もあり、それでも彼女の言葉を疑えるのか、と問われれば僕は彼女に全面的な信頼を置いており、当然一片の疑いもなく、それ故曖昧で現実味のない真実が出来上がり、つまりそれらの事全てをひっくるめて、“らしい”という説明になったのだ。
 
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