脳内風景

□天使と悪魔の狂気と正気
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真っ暗だわ。
私はそろそろ死ねたのかしら?
自分で切り裂いた頸動脈から、ぼたぼた血が流れて土に溶けていったのは覚えてる。
その時ちゃぁんと貴方に抱きついたのも覚えてる。
土の中で混ざり合う、貴方と私の紅い華。
貴方は全く動かない。
分かってるわ。貴方は天国へ逝ってしまったのね。
甘い香りと鮮やかな花々に囲まれた天国へ。苦痛も悔恨も何一つない天国で、幸せになってしまったのね。
貴方の裂けたはらわたから、蛆虫がわいて腐っていく。もちろんそんな事で貴方を離したりしないわよ?血にまみれた私は貴方に一生しがみついているつもり。
貴方の体が腐っていく。
可哀想に。
だって貴方は天国に逝ってしまったのだもの。
悦楽と快楽のみで形成された無秩序という混沌。濃厚な果実の腐ったような芳香に包まれて、毒々しく鮮やかで悪趣味な華々に囲まれて、快楽という美酒に酔わされて、安穏としたぬるま湯に浸かって、溶けてふやけて腐ってしまったのでしょう?
試練も苦行もない天国で、幸せになってしまったのね。
嬉しくて、楽しくて、他の事みぃんな忘れて…私の事も忘れてしまった?そんな筈ないわよね。
貴方と私は一心同体。
きっと私は、貴方が愛した最後の人間になるのよね。
可哀想な貴方。
貴方は天国という底無しの泥沼に堕ちているのでしょうね。だって貴方は優しかったから。
誰にでも平等に、それこそ天使のように、何の裏もない純粋な善意を持って、私に接してくれたから。
だから私は、打算と欲望のみの悪魔より、貴方に見つめられることの方が恐かった。そして何より悲しかった。
好きだったの。
愛していたの。
真っ直ぐに貴方を見つめられない私が嫌だった。きちんと貴方に見つめられて、貴方を見つめ返せる他人が憎らしかった。
でも もういいの。
何もかも。
だって今の貴方は私だけのものだから。
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