脳内風景
□最後の空は朱い空
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人間の価値は“思考”にある。
これが少女の15年間生きていて思った事の最終形態だ。考えられない人間に価値はない。考えをまともに伝えられない人間も、また無意味だ。
意味の無い人間がいないなんてアホな台詞は、弱者の逃げ口上に過ぎない。と、彼女は思う。
『疲れたんだ』
そう呟いて俯いた、少女の兄は“思考”を止めた。
彼は自ら考える事を放棄し、少女にとって無意味で無価値な、人間以下の存在へ落ちる事を選んだ。少女には彼の行動の意味が全く分からなかった。
『もう何もかも…疲れたんだよ』
これが彼の最後の台詞。
正しくは、その青年が少女へ吐いた最後の台詞。
彼は一月前に自殺した。
マンションの屋上から飛び降りて。
一瞬だった。