脳内風景

□夜と薔薇
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「万引きは犯罪よ」

バラは女子高生のように短いスカートを履いていた。
タータンチェックの赤いプリーツスカートと手に持った真っ赤な薔薇が彼女の白い肌に映えて、それはまるでどこかの芸術作品のようだ。
「君は?」
ちなみに言っておくが、僕は万引きなんてしていない。それは誰の目にも明らかだ。
何故なら、彼女が僕に声をかけてきたのは、僕が今まさに本屋に入ろうとしていたその時だ。店に入る前にその店の品物を盗める人間なんて、僕は知らない。
「バラ」
白い腕を僕の真ん前まで伸ばし、僕に赤い花を突きつけて、彼女は微笑。
僕の質問に答えたのか、それとも手に持った花のことを言ったのかは定かではないが、僕は名前と受け取った。
それと一緒に、突きつけられた赤い花も受け取る。
「貴方昨日この店から本を盗んだでしょう?その黒い革の鞄に入れて」
見られていたのか。
こんな美少女に見つめられていながら気づかなかったなんて、いやはや、僕も鈍いものだ。
「とにかく行きましょう」
バラは僕の手を引いて、そこから一番近い喫茶店へ入った。

 
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