脳内風景
□夜と薔薇
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バラと出会ったのは数日前だ。
僕は会社帰りで、やっと込んだ駅から脱出したばかりだった。
駅前の本屋入り口にて、僕らは出会った。
彼女は真っ赤な薔薇を持っていた。
彼女は自分の名前を“バラ”と名乗った。名字は聞いていない。もしかしたら偽名かも知れないとも思ったが、“バラ”と言う名前が妙に彼女に似合っていたので、僕はそれ以上問いつめることをしなかった。
真っ赤な薔薇を一本だけもって真っ赤な唇をつり上げた彼女は、この世界のどんな異常者よりも異端で、美しかった。