脳内風景

□鈴
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「そんな事で拗ねてたのか?」
何とか喋らせた鈴の不満は、案外簡単なモノだった。
「だって…さ」
俯いて口を尖らせる鈴を見て、僕はゆっくり立ち上がる。
「…分かった」

ガチャッ

((((うわっ!!))))
どかっ ばき べちゃ どすんっ
「ってぇ〜」
「っ」
「ちょ…重っ」
「ぅぇ〜」
ドアを開けた瞬間に四人の人間がバタバタと折り重なって崩れてきた。
「お前ら…」
一番下でもはやうめき声しか上げられない麗華の上に、薫子、雅樹、終夜と積み上げらるた人間タワーは、まさにマンガみたいな光景だ。
「えっ!?嘘っ何でみんないるのぉっ?」
鈴は全く気づかなかったらしいが
「内緒話は音量を下げてするんだな」
思いっきり筒抜けだった。
「あれ?バレちゃった〜?」
「当たり前だ」
悪びれなく白状した雅樹の顔から、血の気が引くのはほんの3秒後だ。
「丁度よかった。お前等全員、鈴の残しておいた料理食え?今すぐ」
にっこり笑顔に脅しを込めて、メンバー全員に言い放つ。

以来、四人は異常に僕の部屋へ近づかなくなった。
 
   ◇◇◇
 
「雅樹ぃ、私…まだお腹痛いわ」
顔色の悪い薫子が呟いた。
こちらは無理矢理鈴の料理を食わされた後の雅樹の部屋。
「俺も…てかさ、何で薫子まで一緒に盗み聞きしてたんだ?」
普段ならそんな事しない筈だ、と。聞かれて薫子も首を傾げる。
「さぁ?何でかしらね。気になったの」
「薫子って、もしかしてさぁ…結城の事スキなの?」
「………………………………………………………はぁっ!?」
どうでも良さげな口調の雅樹から目を逸らし、薫子は眉を顰めたまま考えた。
(私が結城君の事?)
「あ・お前今一瞬考えたろ?」
「考えてないわ!」
思わず即答して振り向けば、意地悪く笑う相手の顔。
「あ…あんたね」
何を言っていいのか分からずにいる薫子へ、雅樹がさらに追い打ちをかけた。
「いいじゃん。奪っちゃえば?」
「やめてよ!」
どこまでもフザける雅樹を睨みつけ、薫子が口を開いた。
「そんな事軽々しく言うものじゃないわ。私は結城君をそんな風に見てないし第一鈴は」
「もうすぐ死んじゃう、って?そしたらお前が忘れさせてやればいいんじゃない?鈴の事さ」
ふざけていとも本気ともとれる口調。
「っそんなの…奪うより質悪いわ」
「…」
(結局こいつ結城が好きなんだよな)
胸中そんな事を思いつつ、雅樹は深い溜息をついた。
「…お前激ニブ」
「?」
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