脳内風景

□鈴
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そんな鈴の後ろから、今日のもう一人の食事当番がひょこっと顔を出す。
「結城〜。鈴はぁ、薫子にヤキモチ焼いてるんだってぇ〜」
「なっ?!ち、違ぁうっ!!うちはっ…そんなっっ」
「ほらほらぁ〜。真っ赤になっちゃってぇ、かぁわい〜」
「違うってばっ」
麗華と鈴が盛り上がってきたところで、薫子がそれを制止した。
「ちょっといい?あらぬ誤解は置いとくとして、凄い妙な臭いがしてるのは私の気のせいかしら?」
「「へ?」」
確かに、さっきから気になってはいたのだが、心なしか黒い煙まで漂っている様な…
「「あ゙ーっ!」」
と、もの凄い音量で悲鳴を上げた2人は、すさまじい勢いで仲良くキッチンへと駆けていった。
「なんだったんだ?」
「さぁ?仲良しなんじゃない?」

その日の昼食で、僕等が地獄を見た事は…言うまでもない。
 
   ◇◇◇
 
そしてその日の夜。
終夜は大広間で本を読み、雅樹は部屋で携帯電話(よく繋がるな…)、麗華と薫子は食事の後片付けに勤しんでいた。
「鈴?何拗ねてんだ」
そしてここは僕の部屋。
「拗ねてないよ。自由の女神並に拗ねてないよ。アメリカ万歳だよ」
完璧にむくれてる。
わざわざ僕の部屋まで来てむくれなくてもいいと思うんだけど。
「…僕にどうして欲しいんだよ?」
「むぅー…」
「むくれるなっ。そんな可愛い顔してもダメ!一体どうした?」
「だぁ〜てぇ〜」
 
   ◇◇◇
 
その頃鈴の部屋の前。
(つっまんねぇーっ!なんっか色っぽくならないよなぁ?あいつらって)
(相手が鈴だからな)
(ってゆぅ〜かぁ〜、結城が鈍いんじゃなぁ〜い?)
(いや、その前に、何で私達結城君の部屋の前で盗み聞きしてんの?)
もっともな薫子の問いに、終夜と雅樹はキッパリ答えた。
((面白いから!))
(右に同じぃ〜)
ガックリとうなだれる薫子に『自分の事を棚に上げる』という先人の言葉は、浮かんでこなかったようだ。
そして部屋の話し声に耳を戻す。
「だって結局、最後までうちの作った料理食べてくれたの結城だけじゃん!」
((((ギクっ))))
4人はその台詞に凍り付いた。
「お昼に作ったカレーピラフ!残っちゃったから、うちわざわざラップして冷蔵庫入れといたのに誰も食べてくれないんだよ?」
(あんな物食べられる訳ないじゃない!)
(あれカレーピラフだったのか)
(匂いすら別物だったぞ)
(お〜な〜かぁ〜こ〜わ〜すぅ〜)
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