脳内風景

□鈴
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「結城ぃーっ!」
自然に包まれた山奥の別荘。
草木は朝露に濡れ、澄み渡った空気に染まっている。
「んー、りん…?何だよ朝っぱらから」
「朝じゃないよっ!もう9時だよっ!?」
「じゅぅぶん朝だ」
なんて、僕がいつまでも寝ぼけた会話を交わしていると他のメンバーまでぞろぞろと僕の部屋に上がり込んできた。
僕と鈴を合わせて6人。
部屋はそんなに狭い訳じゃないからいいんだけど…
いかんせん、ウルサい。
「いい加減起きろ」
一本調子でいまいち感情に欠けた声を出したのは荒井終夜。何でかいつもつまらなそうな無表情。
「ほーら、愛しい鈴ちゃんが呼んでるぜ?」
常に真剣実のない口調でふざけてるこいつは斉藤雅樹。一言でいうとチャラい。
「まったく!いつまで惰眠を貪ってるつもりな訳?とっとと起きなさいよ」
このいかにも真面目なお節介は津島薫子。学級委員長タイプ。
「だぁる〜い。結城ぃ〜、あたしも隣で寝ちゃだめぇ〜?」
ゆるい口調でだらだら喋るこいつは森住麗華。常に眠そう。
「ダメだっつーのっ!結城はうちのなんだからぁっ」
それからこっちが、ただひたすらにテンションの高い僕の彼女。高村鈴。名前の呼び方は“りん”。間違えると結構怒る。
「あ゙〜 もう…起きればいいんだろ?だから恥ずかしい台詞を堂々とのたまうな」
彼らは今年高校入学で同じクラスになり、妙に気があってしまった連中だ。
ちなみに僕は黒沢結城。
一応この紫陽花が見事な別荘の持ち主(親が建てた物だから、“僕の”と言っていいのかは不明だけど)。
今回僕らは親睦会と言う名の小旅行に来ていた。

「ほら結城。うちにとっては最後の旅行なんだからっ」

その言葉に眉を顰め、僕はゆっくり起き上がった。
 
   ◇◇◇
 
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