脳内風景
□カノジョ
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簡単に言えば、僕は彼女に嫉妬していたんだ。
僕には夢があった。やりたい事があった。好きな事があった。
でも出来なかった。
何故なら僕には…才能がなかった。僕はただの凡人だ。彼女と違って。
そう、彼女なら何だって出来たのだ。
僕は彼女に嫉妬していたんだ。
だって彼女は何だって出来た!
なのに何故?
ヤリタイコトガナイナンテ
夢も希望も一つもない?趣味も、好きな事も、楽しいと思えることが一つもない?
冗談だろう?
君が?
だけどソレは、偽らざる彼女の本心で…それ故彼女は、僕の言う事を何でも聞いていた。彼女が欲しかったのは指示を与えてくれる人。自分がどうすればいいかを決めてくれる人だったんだ。
ズルい…と思った。
したい事の希望ばかりで、何の実力もない僕。全ての才能に恵まれながら、何の希望も持てなかった君。
どちらが幸せなのかは分からない。
ただ、僕は憎かった。憎くて憎くて、胸の内が焦げるようで、どうしようもなかったよ。君の事がいつまでも頭から離れなくて、心休まるときが一時もない。もう本当にどうしようもなくて、仕方なかった。君のいない世界に行ってしまいたかった。君以外の事を考えていたかった。
なのに君から離れる事が出来ない。
出来なかった。
何故なのだろうね?
結局僕は、何年も何年も君に縛られ、戒められていたのだと思う。
僕は君が、心から憎かったんだよ?
『愛してる』なんて……‥
心にもない事を口にする君が。
そんな言葉で、僕を縛り付ける君が。
憎くて、憎くて、羨ましくて、妬ましくて、情けなくて…
嫉妬だったんだ。
羨望だった。
憧れだった。
愛して…いたのかもしれない。
バカだろう?
君は誰だってよかったのに。
僕を愛してなんかいなかったのに。
それでも僕を縛り付ける君。
僕は自分が惨めで情けなくて、どうしようもなかったんだよ。