「ついたらまずさいしょにぐるぐるってまわるやつにのりたいのだ!」
「ええと、コーヒーカップですか?」
「そう、それ!それでつぎはおうまさんがまわるやつにのって、そのあとうえにのぼってからがーっておちていくやつにのりたい!」

多分、メリーゴーランドとジェットコースターのことだろう。身振り手振りで一生懸命に説明する三成に左近は瞳を細めた。
どうやら三成は回転する乗り物が気になるらしい。刺激が強過ぎてびっくりしてしまわないといいけれど。

「さぁ見えてきましたよ」
「おおっ!」

観覧車やジェットコースター、色とりどりの乗り物が見えてきて三成の瞳が輝いた。真近で見る乗り物は三成にとってはとても大きく見えるようで、しきりに大きいなとびっくりたような声を上げている。何しろ遊園地に来るのは初めてなのだ、全てのものが新鮮に見えるのだろう。
駐車場に車を止めると、三成は素早く車から降りた。早く行きたくてうずうずしている様子だ。

「三成さん!」
「さこんはやくはやくっ!」

左近も慌てて車から降りると三成の後を追った。流石、山を駆け回っていたと言うだけあって三成の動きは素早い。これ以上距離が開いてしまう前にと、左近は大声で叫んだ。

「待ってください!三成さん!」
「さこんおそいぞー」
「三成さんが早いんですよ」
「そうか?」

左近の声で歩みを止めた三成はきょとんとした表情で首を傾けている。少し考えるような仕草をした後、三成は左近の手を取りぎゅっと握りしめた。

「これでいっしょだ!」
「はい。左近を置いて行かないでくださいね」
「しっかりついてくるんだぞ」

温かな指を握り返すと、三成は左近の手を引いて歩き始めた。これではぐれてしまう心配はない、歩調は軽く今にも踊りだしそうな勢いだ。手を振りながら歩く三成はご機嫌な様子で鼻歌を奏でている。

「あっ!あれあれっ!あれにのるのだ!」
「コーヒカップですね。三成さん一番に乗りたいって言ってましたね」

カラフルな色のコーヒーカップがくるくると回っている。その様を見ているだけで目が回りそうだ。
「さこんいくぞー!」

元気いっぱいの声と共にコーヒーカップを目指して走る。乗り場に辿り着くと三成は迷うことなくピンクのコーヒーカップに乗り込むと、真ん中に備えつけられた回転ハンドルを興味深そうにしげしげと見つめた。恐る恐る指先でつついてみたり、色々な角度から覗き込んだりして三成は大きな瞳を瞬かせている。

「このハンドルを回すと回転するんですよ」
「んー……こうか?」

そうこうしているうち音楽が流れコーヒーカップが緩やかに回転を始める。驚いた三成は慌てたように左近の洋服の裾を掴んだ。

「大丈夫ですか?」
「へ、へっちゃらなのだ!」
「無理して回さなくてもいいんですよ」
「だいじょうぶだっ!ここをまわせばいいんだな……えいっ!」

ピンクのコーヒーカップが勢いよく回転を始める。重力に従ってふたりの身体が大きく揺れた。三成は最初ハンドルにしがみつくようにしていたが、回転に慣れてきたのか更に思いっきりハンドルを回し始めた。
あまりに大きく回転させるものだから情けないが、左近はしがみついているので必死だった。左近の様子など気にも留めず三成はひたすらくるくるとハンドルを回し続けている。回る景色の中で楽しげな歓声が響く。

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