危険小説(裏)

□eternal...
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【eternal…】


サイバーの中でゆっくり動き出した。
サイバーは目を瞑って声も出さずにただ揺さぶられていた。
普段絶対するコンドームも今はしていない。
「サイバー…」
瞑った目から涙を流しながら小さく言うと、暖かい手が頬を撫でる。
それに安堵を覚え、俺は出し入れをより深く…
でも、すぐにどうしようもなく悲しくなって動きを止めた。
身体を起こして涙をぬぐう。
電気もつかない寒い廃屋。
月明かりが痛みきって穴の開いた屋根から流れ込んでくる。
風に乗って運ばれてくるのは思わず顔をしかめたくなる灯油のにおい。
胸は切なさで満ちていた。
「リュータ」
優しい声が聴覚を包んだ。
微笑んでこちらを見る顔は、月光に濡れて天使のように綺麗だった。
「心配しないで」
こちらに向けて広げられた華奢な腕が、慈悲深い女神を錯覚させる。
俺はその深い愛を抱く胸にそっと頭を預けた。
柔らかな抱擁。
涙は更に止まらなかった。
「泣かないで…」
細い指は俺の髪を絡めながらそっと頭を撫でてくれる。
優しさをくれる手に俺はしばらく縋っていた。
触れ合う肌が懐かしいくらいに暖かい。
辛い思いも、償えない罪も溶けて絶対の安心感を与えてくれるようだった。
「大丈夫、大丈夫だから続けて?」
促す声があらゆる強張った感情をゆるりとほぐしていく。
それでも顔を上げれるようになるのに酷く時間がかかった。
慰めてくれるサイバーの手が俺に決心を与え、ようやく少し身を離した。
肌が離れて多少不安はあれど、繋がった現状と見えない絆とで結ばれている事実は、先ほどのように俺を不安にさせなかった。
「動くぞ」
無反応を了承と認識して、サイバーの中へ深く侵入した。
腕をつかんでいたサイバーの手に力が入る。
その手から伝わる体温が身に浸透してきて『生』を伝える。
その愛しい熱まで全て手に入れたい、そんな禁断の欲求を覚えてしまった。
それは俺にとって美の、欲望の頂点で、同時に終局でもあった。
更に大きな罪。
欲求を満たすことが辛くとも、俺はその悲しみや苦しみをも欲として認識しているのかもしれない。
きっとおかしくなってしまったのだ。
感情も感覚も理性も情熱もすべて狂わされてしまったのだと思う。
今、下にいる者を愛しすぎた故に。
でもそれが悪いことだとは思わない。
狂わされておかしくなってしまうのも、愛故ならば俺はそれでいい。
悪の欲求を満たすことも、たとえそれが耐えられない悲しみを生むものだとしても、それがそいつを愛していることだと認知しているならば、そしてそれを相手が承知しているならば。
たとえ殺してしまったって…
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