前回の拍手の雲雀さんside.
十年後に行っちゃった雲雀さん



応接室で寝ていたはずの僕の視界には、見慣れた天井ではなく、見慣れぬ天井で、背中の感触も、柔らかいソファーではなく固い畳の感触がする
これは一体どうゆうことかな、さっきした音と関係があるの、ねえ、そこで呆然としている、いつもと違った黒川花

いつもと同じように応接室のソファーで眠っていた僕は、突然の衝撃とそれによって生じたであろう音で目が覚めた
目を開けてみれば、何故かそこは見覚えのない場所で、そしてそこには普段よりも少し背が高く、髪の短くなったおそらくだけれど、黒川花が立っていた

「………………」
「………………」
「……ねえ」
「え、あ、何?」
「……ここ、どこ」
「恭弥の、基地?」
「………………」
「………………」
「………………」
「あのさ、恭弥、今いくつ?」
「……15、だけど」
「あ、そう。そうかだからか」
「……何」
「多分恭弥は十年バズーカに当たったんだと思う」
「……十年バズーカて、あの沢田綱吉たちと一緒にいる子供が持っている武器のことかい」
「うん、そう」
「……それとこれと、どう関係があるのかな」
「十年バズーカに当たると十年後に行っちゃうらしいのよ、実際見たのは初めてだけど、こうなるのね」
「……そう、で?」
「うん?」
「……なんで君は十年後の僕の家に居るのかな?」
「なんでって」

恭弥が合い鍵くれたから、好きに入れるの、そう当然のことのように口にした君の手の中には、おそらくこの家の鍵だろうものがあって、僕は一瞬めまいでも起こしそうになったけれど、耐えた
何故、彼女に家の合い鍵を渡したのだろうかとか、彼女が僕のことを名前で呼んでいることとか、彼女がそれらのことを当たり前のように受け入れてることなど、聞きたいことは多々あるけれど、たった5分、それも来てから随分だった時から聞いても全て聞ききれることではないから、一番聞きたいことだけを聞くとしよう

「………1つ聞いてもいいかな」
「なあに、恭弥」
「………その指輪」
「指輪?」
「……そう」
「…ああ、これの事?」

彼女の右手の薬指には、紫のアメジストらしき石が埋め込まれたシンプルな指輪がはめてあった
左手の薬指にするのが結婚指輪なら、右手の薬指にするのは婚約指輪になる
知らずに左手でなければ、薬指に指輪をはめても平気だと判断してつけている女性が多いけれど、彼女は僕が勘違いをしていなければ、そういう知識はきちんとあるはずで、ということは彼女には婚約者が居ることになる
別に僕が気にすることでは無いかもしれないけれど、一度気がついてしまえば、気になってしまうのが本心で、現代に戻ってから頭を悩ませるのもそれはそれで嫌なものがある

「綺麗よね、大きすぎず、小さすぎず、ちょうど良い大きさの石で」
「………………」
「指輪の装飾も、シンプルだけど地味ってわけじゃなくて」
「………………」
「石の色と銀の色が意外とあってるし」
「………僕が聞きたいのはそういうことじゃ」
「さすが恭弥って感じ」

彼女からその言葉が出たとたん、タイミングを見計らっていたかのようにボンッという音が鳴り響いて、周りが煙に包まれる
ちょっと待ちなよ、ていうことは何かい、あの指輪は僕が、十年後の雲雀恭弥が彼女に渡したものだっていうことかい
ああ、失敗した、更に頭を悩ますことになったじゃないか、今の僕は右手の薬指に指輪をつける意味を知っている、ということは、十年後の僕が忘れていたり、記憶喪失にでもなってない限りは確実に、そういう意味で彼女に十年後の黒川花に渡したと言うわけで、彼女はそれを受け取ったということは
僕たちは十年後にそういう関係になっている、ということかな

いや、もう考えるのは止めておこう
いくら考えても答えがわかるのは十年後になるのだし、十年バズーカに当たればまた行けるらしいけど、あれに当たるのはひどく癪だし、行ったとしても黒川花が居るとは限らないのだし
それに、良い未来だった場合、その事のせいで未来が変わってしまっても困るしね


回答は十年後
(彼女となら、そんな関係になっていても悪くない)
(そう思うから、僕はね)



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