reborn

□未来の私へ送ります
1ページ/2ページ

好きだった、嫌いだった

今でも愛してる、今も愛してない

会いたい、会いたくない

愛おしい、醜い

相反する2つの心

あの時の私は2つとも持っていた




【未来の私へ送ります】




「好きだ」

放課後、山本に呼び出されてそう言われた

「ごめん、私、他に好きな人がいるんだ」

山本の事は嫌いじゃない、だけど、それは友達として

「そう、か」

「ごめん」

本当に、ごめん

「いや、別にいいんだよ!気にすんなって」

つらい筈の山本に励まされる私って

「あー、あのさ、黒川が好きなのって」

山本はそこで言葉を区切って言いにくそうに告げた

「獄寺?」

「えっ、」

驚いた、まさか山本に当てられるなんて

誰にもバレた事はないのに

「なん、で」

「いや、黒川さ、たまに獄寺の事を見てるときが合ったんだよ」

あまり長い時間じゃないんだけどな、そう言って山本は笑った

「その時の黒川の獄寺を見る目がさ、なんか優しいっていうの?そんなんだったから、もしかして、とは思ってたんだ」

きっと、私が獄寺を見ていた時間はほんの僅かなはずだ

なのにその時の私に気づけるということは、山本も私の事を見ていたのだろう

「そう、なんだ」

山本は優しい、きっと今縋っていったら受け止めてくれるだろう

でも、それは出来ない

「黒川、」

そんな事をしたら、傷つけてしまう

山本も、そして自分も

「頑張れよ、応援すっからさ」

そんな事、あってはならない

「うん、ありがとう」

そういった私を見て、山本は笑った

「じゃあ、俺帰るけど、黒川は?」

「私はもう少し残るよ」

山本はそうか、じゃあまたな、と言って帰っていった

「ごめんね、山本」

気持ちは嬉しかった、でも、山本を異性として好きになることは出来ないんだ

獄寺が好きだから

山本の事を好きになれたら、どんなに楽なんだろう

そう思っても、好きな人はやっぱり獄寺で

でも、好きなはずなのに

私の中には相反する2つの心がある

獄寺の事が好きだけど、嫌いで

愛してるけど、愛してない

とても会いたいけど、会いたくない

愛おしいのに、醜く感じる

これはきっと、私の弱さ

獄寺へのこの想いを、本当に実感するのが怖いんだ

今ならまだ引き返せる、引き返そう

そう思ってる自分がいる

愛してない、好きじゃない、嫌いなんだ

そう思わせようとしてる自分がいる

好きだけど、嫌いだから

告白なんて出来ない

山本に返事はしたけど、きっと自分は頑張れない

好きだから、怖い

後で後悔する、わかってる

それでも、私は動けない

あぁ、なんて臆病で愚かなんだろう

きっと未来の私は今の私を憎んでるのでしょうね

大好きよ、でも大嫌いだから

今の私は心に鍵をする

奥底に封じ込めて

未来に先送りにするの

逃げだということはわかってる

卑怯でもいい

今はただこの苦しみから逃れたい

未来の私、ごめんね

苦しみは更に酷くなるでしょうね

でも今の私には無理だった

少しの間でも、楽になりたいから

短い間でしょうけど『さようなら』

また、『出会う』までは楽だから

『恋心』あなたを未来へ送ります

もう、戻らないと良いのにね

そんな事はないけれど





















END




あとがき→
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ