reborn

□今はまだ
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あぁ、好きだ。
唐突に生まれたこの感情。




『今はまだ』




いつもどうり10代目をお家まで送って、自分の家まで行く帰り道。
タバコが切れた、すぐ近くに自販機が合ったのを思い出してその自販機の方に方向転換。

しばらく歩いて、お目当ての場所に行ったら先客が1人。と言っても、相手の目当てはタバコではなくてその隣の飲み物らしい
さっきから自販機を眺めたまま突っ立っている。


「よぅ、黒川。さっきから何してんだ?」


黒川はいきなり声をかけられたことに驚いたらしい、肩が跳ね上がった。


「ご、獄寺。あんたねぇ、いきなり話しかけないでよ!ビックリしたじゃない」


いきなり話しかけないでよっていきなりじゃなしにどうやって声をかけるんだよ。心の中ではそうぼやきながらも口にはださない


「悪かったな、で?何やってたんだ」


何となく想像はつくが一応聞いてみる。


「見てわかんない?飲み物を買おうとしてんのよ」


まぁ、それが普通だろうな。


飲み物の自販機の前で他のことやってたらそれこそ、不審者だ。


「あぁ、そうか。で、なんで買ってないんだ?」


さっきの様子だと結構前からここに居るようだ。
今は冬の半ば、下手したら風邪を引いてしまう


「ん?あぁ、何買おうか迷ってて」


やっぱミルクティーにしようかな、いやでもこっちのレモンティーも捨てがたい。などとぼやいてる。

この寒いなか良くやる、俺じゃ有り得ないな。興味がなくなった俺は、当初の目的を思い出し、自販機に歩み寄る。
自販機にお金をいれて、いつも買ってる奴のボタンを押した
タバコが出てきたので拾おうと身を縮めた所であることに気がつく。


「‥なんだよ」


黒川がさっきからこちらをじっと何も言わずに見ていたのだ。


「いや、たいしたことじゃないんだけどさ、タバコ、不味いじゃない。良く吸えるなって思って」


不味いってお前。


「吸ったことあんのかよ」


たまたま出てきただけかもしれないと思ったが、気になったのでそのまま聞く。


「うん、昔ね」


答えはあっさりとした物だった。
でも、昔って俺らまだ中学生だぜ?
それだと、吸ってたの必然的に小学生になるんだけど。言いたいことは色々あったが心の中に押し込める


「自分も吸ってたことあんのに聞くのかよ」

「吸ってことあるから聞くのよ、私には不味かったから」


だから今吸ってないでしょ?と付け加える。


「何となく、だよ。今まで吸ってきてたから癖みたいなもんだ」

「ふーん、そういうもんなのかね」

「そういうもんなんだよ、それより買わねーのかよ」


あっ、忘れてたと良いながら黒川がまた悩み始めた。


「うーん、どっちにしよ」


うねりながら真剣に考える。
真剣に考える程のことか?これ
しばらく見ていると。あっ、そうだと何か思いついたように立ち上がって


「獄寺、あんた一個買いなさいよ」


と言ってきた。

当然俺は、はぁっ?と頭にクエスチョンマークをいくつも浮かべている。


「私、ミルクティーが飲みたいんだけどレモンティーも飲みたいのよ」


黒川はお金は私が払うから、お願いと顔の前に手を合わせてきた。
何でそんなにしてまで飲みたいんだか、わけわかんねぇ。


「何でそんなに飲みたいんだよ」

「何でって、なんとなくだけど?」


なんとなく飲みたいだけでそんな悩んでんのかよ。
女ってみんなこうなのか?


「で、良いの?ダメなの?」


別に断る理由がない俺は別に良いけどよ…としか言いようがない。
黒川はじゃあといって自販機にお金を入れて二回ボタンを押した


「はい」


出てきた2つの内の1つを俺に渡す。
黒川は俺に渡して残った方の蓋を開ける


「暖まる」


といって微笑んだ。ただ、それだけの事。
ただそれだけの事なのに唐突に良いなって思った
しばらく黒川を見ていたことに気づいて視線をそらした瞬間、唐突に話しかけられた。


「ねぇ、獄寺」


俺は見ていたことに気づかれたのかと思ったが、そうではないらしい。


「‥なんだよ」

「それ、ちょうだい」

「あ、あぁ」


持っていたレモンティーを渡す。
黒川が少し飲んで、おいしいと言って。


「はい、ありがと」


返してきた。


…返して、きた


「‥は?」


「どうかした?」


どうかしたじゃねぇよ、一回飲んだやつを人に返すか?普通。
そうは思ったが口に出すことは出来ず、黙って受け取る。
受け取ったはいいが、これを俺にどうしろと?















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