bleach

□好き
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「好きです、付き合って下さい!」


必死の思いで言ったであろう、その可愛い顔を真っ赤にさせた彼女の告白を受けたのは一角だ
何故僕がその告白を聞いているのかというと、事の当事者である二人の死角になる位置に僕があるからだ
別に覗いていた訳じゃない。いや、正確には覗いたことになるのだけれど
これは一角の意志だ


朝、一角が自身の靴箱を開ければ見慣れた形の紙が入っていた。
封筒の形をしたそれを開けば、予想した通りの内容が綴られた紙が出てきた

俗に言う、ラブレターというやつだ
全盛期を過ぎてもなお靴箱にラブレターをいれるなどというオーソドックスなことが起こるのだから、ラブレターはそこいらのものよりもよっぽど流行だと思う


その手紙の内容は
「放課後、屋上に来てください」
という、もし可愛い封筒に入ってなくて敬語じゃなかったら果たし状になってしまいそうな内容だ、ある意味これも王道だけれど、名前は書いてない



一角は週に三回位のペースでこの手の手紙を貰う、顔もそこそこで、スポーツできて、頭は…まあ悪くはなくて、一見怖そうな風貌をしてるけれど、関わってみれば良くわかる、意外と気遣いも出来て優しい
これだけ条件が揃ってるんだから、モテなきゃおかしいと言えばおかしいのだけれど

「どうするの?」と声をかければ、少しウンザリしたような声で「行く」と返ってきた。
一角はこれらの手紙を貰う度に嫌々ながらも指定された場所に赴く。
さすがに無視するのは不憫だからと言っていたが、そういう律儀な所が好かれる要因だということに本人は何時になったら気が付くのだろうか。
いつもそれに付き合わされる僕からしてみれば堪ったもんじゃない。


それ程までにモテる一角に彼女がいない理由はただ一つ、本人にその気がないからだ




一角は優しいから大体の人には気に入られるし、その中には当然、友達以上の感情を持って一角のそばに居る人だっている
けれど一角は、その事に気が付いていても触れない
気づかないフリをして、その人から少しずつ離れていく




面倒、なんだそうだ。そういう感情は少なからずその人との関係を拗れさせる、それが嫌なのだと。昔、今回のように一角の告白現場に付き合った時に理由を聞かれてそう答えていた



その理由を聞いた女の子はその時一角と一番仲のいい女子だった、告白した後しばらくしてからは話さなくなってしまったけれど


「もう、私は耐えられない
斑目くんは優しいけど、残酷よ」


その彼女の言葉だ、まったくその通りだと思う
告白されて、彼女の気持ちを知ってからも、一角の態度は変わる様子はなかった
まるで告白なんてもの事態、なかったかのように
それが耐えられなかったらしい


「良いの、一角。彼女…」
「構わねぇよ」


彼女が居なくなっても一角の態度はやっぱり変わらなかった







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