bleach

□愛おしい
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最近の俺はどうもおかしい、何か変なものでも食ったっけか?
いや、そんな記憶はないしな。
一応、心あたりはあるんだ、物凄く認めたくはないが、一応な
黒崎達が来たときにたまたま戦った、ただそれだけ
それまでは何の接点もなくて、擦れ違うだけとか、事務的なことで話したりだとかその程度だった
それが黒崎達が来た後からは示し合わせたかのように偶然会うことが多くなって(もしかしたら元から良くあってたのに気がつかなかっただけかもしれないが)、良く話すようになった
他愛のない話ばかりだ、隊長が居なくなった事に対しての慰めもなければ気遣いもない
まるでその事象を知らないかのような素振り、実際は確実に知っているんだろうが、コイツにとってはそんなこと、どうでも良いことで、だからこそ、何も考えずに、普段の普通の俺のままで話すことが出来る
綾瀬川の話の中には十一番隊の話題が良く出る、その中でも斑目一角の話題は全体の約8割をしめていて、話に出てこない事なんてのは殆どない
「一角は僕の全てなんだ、一角がいなければ今の僕はここにはいないし、それどころか世界に絶望して命さえも絶っていたかも」
「僕は一角とどちらかの最期まで一緒に居られたらそれでいい」

綾瀬川が言うにはそれは恋愛感情とはまた違ったものらしい
恋人として好きなのではなく、家族として愛してると
だから嫉妬に狂ったり、相手からの恋愛感情は求めたりもしないと
斑目の隣に居ることは望まないが傍に居ることは望む
恋愛感情をもちっぽけなものに見えるほどの親愛

「なんでそこまで斑目三席のことが好きなんだ?」
「…愛と言ってくれないかな?美しいからだよ、一角がね」
「………そうか?」
「外見的なことを言ってるんじゃないよ?いや、確かに外見的にも美しいけれどね、心が美しいんだよ、一角は」
「…ふーん」

何かにつけて一角と口に出す綾瀬川は、斑目のことを問えば美しいと口にする
俺には理解出来ないが、綾瀬川にとっての斑目一角は絶対的な存在らしい
綾瀬川の話を聞けば、斑目一角は一方的に愛情を注がれているように聞こえるが、実際の2人を見てみれば、斑目からも綾瀬川とはまた別の方法で愛情が注がれているのは一目瞭然だ
死神になる前から一緒に居たという2人は、何か他の者が入れないような雰囲気を出している
…最近、それを目の当たりにする度にイライラする気がするのだ、嫌なことに
アイツらは何時も一緒にいる、だから、たまたま綾瀬川を見かけた時には確実に斑目一角も一緒にいる
おそらく俺はそれがどうしようもなく嫌なのだ、そういう場面に遭遇した時に胸に走る痛みがあることに気が付いたのは一体いつのことだっただろうか
いくら本人達が恋愛感情はないと言っても、周囲から見ればそれはあるのと大差なくて、それは俺がみても同じことだ
恋愛感情はないとしても、お互いがお互いを大切にしているのはあの2人、もしくは片方と親しければ良く分かる
あの2人の間には、入れない、入ってはいけない空間がある

「…情けねえ」
「何が?」
「うわ…っ!?」

誰もいないと思っていた状態で自分がただ呟いただけの独り言に対して、返事が返ってきたら誰でも驚くだろう
思考の渦の中に居たせいで近くに来ているのに気が付かなかったのか、はたまた相手が気配を消すのが上手いのかどちらかはわからないがこんなに近くまで来ているのに全く気が付かなかったなど副隊長としては確実に失格だが

「ひどいな、そんなに驚くことないじゃないか、まるで化け物でも見たかのような声をだして」

今の俺にとってはお前はそれ以上だ馬鹿野郎という言葉なんとか飲み込んで謝罪の言葉を述べる

「わりぃ、いきなりだったもんでついな」
「…君、僕が普通に近づいたのに気付いてなかったみたいだもんね」

さっきの問いは前者に決定した、マジで副隊長失格だ

「…ああ」
「なにボーっとしてたのさ、考えごとかい?」
「…まあ、そんなもんだ」
「ふーん?」

自分から聞いた癖に興味がなさそうに流す、少しは気にしろよ

「なんだい?」
「は?」
「さっきから僕の事みてるじゃないか、何か言いたいことがあるなら聞くけど?」
「…何でもねぇよ」

俺がそう答えれば再び沈黙が俺達の間に降りた、まあ沈黙が続いているからといって別段気まずい訳でもないがな、綾瀬川がどう思ってるかは別として

綾瀬川を見てみれば、特に気にするでもなく勝手に俺の本棚から本を取り出して読んでいた、何しに来たんだ、コイツ

「………………」
「………………」
「………ねえ」
「……なんだよ」
「君には好きな人っているの?」
「……なんでそんなこと聞くんだよ」
「なんとなく、で、どうなの」
「さぁ」
「君ねぇ、自分の事でしょ?」






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