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□些細なことで
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かっこいい、彼女には、そんな言葉が似合うと思う
本人に言ったら殴られそうだけど
いつも背筋をピンと伸ばして、踵を鳴らして歩くその姿には、どこか気品が漂っている
どんなにその口から暴言(といってもほとんどが正論なんだけど)が飛び出ようと、気にならないほどの容姿
はっきりとした物言い、どんな相手に対しても変わることのない態度、どこをとっても彼女はかっこいい
まあ、贔屓目っていうのが入ってる可能性も大いにあるが、でもそれを抜きにしても、彼女は他の人物に比べてどこか違う雰囲気がある
友にそれを話せば、大人っぽいからではないかと言われたけど、それも違う気がする
何か彼女は【特別】なのだ

「ちょっと山本、あんた聞いてんの?」
「へ?」
「………聞いてなかったわけね」
「え、何、黒川」
「朝先生が言ってたでしょ、今年は委員会、強制参加だって」
「ああ、そんなこと言ってた気がする」
「あんただけ委員会入ってないのよ、早く決めて」
「え、あー」
「まあ一つしか無いけど」
「だよなー、何?」
「体育委員、バッチリじゃない」
「体育委員って何すんの」
「知らないわよ、体育祭の時とかに何かやるんじゃない?」
「体育祭実行委員ってのもあんじゃん、違うんじゃね?」
「ああ、確かに、てか私に聞かないで」
「ごめん、ごめん」
「じゃあこれに名前書いて」
「りょーかい」
「…………………」
「…………………」
「……なあ、黒川」
「なに」
「黒川は委員会何に入ったんだ?」
「は?」
「いや、なんとなくなんだけど、てかそうだよな、黒川は学級委員か」
「そうね、あと体育委員」
「ふーん」
「…………………」
「……………は?」
「なに」
「や、なんで?学級委員だろ?」
「人数が足りないから仕方なくよ」
「そう、なんだ」
「そうよ」
「…………………」
「…………………」
「……はい、書いた」
「ん、じゃあよろしくね」
「おう」

俺が渡した紙を持って遠ざかっていく黒川をみていたら、いきなり黒川が振り返って俺の方をみた

「どうかした?黒川」
「山本」
「?」
「誕生日おめでと」

じゃね、と言って今度こそ下いた場所に戻って行く黒川を見ながら、黒川、俺が今日誕生日だって知ってたんだ、なんて嬉しくなったりして


些細なことで
(嬉しくなる、それが恋 by一般常識)
(やっぱり彼女は特別だ)
(たった一言で俺をこれだけ楽しくさせるのだから)
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