*太陽の扉*

□川の流れのように
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天気がよかったから、近くの川まで出掛けることにした。
犬を連れて。
自転車を走らせようかと思ったけれど、久しぶりに歩くことにした。
川までは歩くと意外と距離があった。
友達の家の前を1軒2軒と過ぎていく。
途中で同じクラスだった子と会った。
特に話すこともなく、二人とも軽く言葉を交わして別れた。

川はそれほど綺麗ではない。
それでもきちんと整備はされていて、ぼんやりと過ごすことは出来る。
川は、それなりに緩やかな流れで過ぎてゆく。
最近は自転車でしか通らないから、この道を歩くのは久しぶりだった。
犬も、そんなに疲れてはいないらしい。
いつの間には、ずいぶんとサイクリングロードを歩いていた。
小学校の時には、マラソン大会をここでしていたことを思い出す。
あの頃は友達とよく、ここまで遊びに来たものだ。
何がいるのか分からない川に糸をたらして、魚釣りの真似事をしたり、砂で遊んだり、鳥を観察したり、あの頃はいろんな物が遊び道具に変わった。
川に入って遊ぶまではしなかった。
その頃から川は汚かったのだ。

気が付くと犬に引っ張られる形で、トンネルまで来ていた。
上が川を横切る橋と、車道を兼ねている。
車の走っていく音が、トンネルに響く。
トンネルは電気がついているにも関わらず、薄暗かった。
まだ昼を回ってもいないのに、短いトンネルの中だけがひんやりと空気を変えていた。
隅に、薄汚れた布に包まってホームレスが眠っている。
いくら整備されているといっても、人はそれほど来ないから、たまにそういった人たちがいたりするのだ。
犬が悪びれる様子もなくそちらに近づいていく。
匂いを嗅ぐように鼻を鳴らすと、その布がごそっと動いた。
中から手が伸びてきて思わず叫びそうになる。
その手には真っ赤な林檎が握られていて、コンクリートの上に置かれた。
次に、銀色のナイフが布の中から姿を見せる。
殺される。
そう思ったが、それもコンクリートに置かれた。
剥けということか?

「あの…」




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