*太陽の扉*

□川の流れのように
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二口で肉まん、基あんまんを間食した。

「よかったらこれも食べます?」

申し訳ない気分になって、自分の分を差し出す。

「半分だけでいい」

そう言って、私の手から、あんまんの半分を奪っていった。
それも、大きい方を。

「あの、セセラギさんっておいくつなんですか?」

聞きながら、私もあんまんを頬張る。
冷めてはいたが、口の中で、程よい甘さが広がった。
これは、これで、よかったかも知れない。

「25だ」

セセラギさんが間接に答えた。

「へー、やっぱり若いんだ」

身なりを整わせれば、それなりにカッコイイのではないどろうかと想像を巡らす。

「君たちから見れば、オヤジだ」

その言葉が、セセラギさんには似合わなくて、思わず笑いが漏れた。

「可笑しいか?」

「ごめんなさい。セセラギさんがそんな事、言うとは思わなかったから」

笑いすぎて浮かんだ涙を、手の甲で拭う。

「まだ、オヤジには遠いですよ」

「そうか」

セセラギさんは嬉しいのか、そうではないのか判別の付かない返事をした。

「君は、冬が好きか」

「え?」

突然話題が変わって、なんと答えればいいのか分からなかった。

「雪は、好き」

セセラギさんが片言の日本語を話す外国人のような話
し方をした。

「ああ。雪は好きだけど、寒いのは嫌いです。どちらかと言えば春かな」

「俺も、好きだ。食べ物がたくさんある」

「食べ物?」

春に食べ物が増えるのかと、思わず聞き返してしまった。
セセラギさんがコクッと頷く。

「その辺に草が生える」

セセラギさんが、少し嬉しそうにしていた。
セセラギさんはたぶん、野草のことを言っているのだろう。




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