*太陽の扉*

□川の流れのように
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それでも、いつもより白く、明るく見えるその雲が不思議だった。
雪は、しんしんという音がとても相応しく、静かに地へと下りてゆく。
上を走る車も、今日は幾分静かだった。

「雪は、儚いから。静かで、すぐに消えてしまって、たくさんの形を持っていて。だから好きです」

「そうか」

「その言葉は、人間に似ているな」

セセラギさんが静かに語る。
何のことだろうと、耳を傾けた。

「人間も、たくさんの形だ。それに脆くて儚い」

「儚いものは、美しい。……そうすると人間は違うのか」

そう言って、自分ですぐに否定した。
最後は、独り言のようにも聞こえた。
語っていたセセラギさんの姿が、私には雪よりも儚いものに感じられた。
悲しくなるくらい、美しいものに。
それからセセラギさんは、黙って肉まんを一口食べた。
一口で、半分くらいがなくなった。

「うっ…」

いきなり苦しそうな声を上げたから、びっくりして現実へ引き戻された。

「大丈夫ですか!?」

私は慌てて、セセラギさんの顔を覗き込む。
セセラギさんは、なんとも複雑な顔をしていた。
長い前髪に隠れた眉が、悔しげによっている。

「あんまんだ」

セセラギさんはそれだけ言って、自分が食べた中身を見下ろしていた。
私も、手に持っていた物を半分にして、中身を確かめた。

「あっ…」

確かに、中にはきめ細かい餡がぎっしりと詰まっている。
まさしくあんまんだった。
きっと、店員が間違えたのだろう。
値段は変わらないからいいのだが、肉まんと思って食べたら、それはそれで面白くない味だと思った。

「ごめんなさい。大丈夫でしたか?」

「なんともない。驚いただけだ」

そう言って、残りの半分も口に運ぶ。



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