本編


□act1 君逢始動。
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君逢学園。

広大な敷地面積、整った数々の設備、セレブが通う有名なお金持ちの高等学校…というのが、我が学園の一般的に知られているイメージだろう。

それは充分魅力ある事実だが、更なる魅力――
普通科以外に特殊学科が存在している事を知っていただきたい。

一般学力に加え、実技、面接合格と、この3つの条件が揃えば学費の高額負担は免除され、誰でも入学可能となるが、誰でも合格出来るとは限らない知る人ぞ知る狭き門。

さあ、目の前にある学園資料を開いて、その名を脳裏に刻もう。

君逢学園
『執事養成科』の名を………








「…以上…です」

長い一文を一言一句間違わず空で朗読した者は、そう告げて軽く頭を下げた。
周りからは感心するどよめきと共に思わず拍手が零れていた。
そんな中、別の者がこれについて補足する様に説明をする。

「この理事長からの紹介アナウンスの後、執事養成科の校舎等の映像が流れるんですよ」

「君逢学園の入学資料に、そんなDVDがあったなんて…本当に知らなかった」

「マスターは入学当初から、この執事養成科を御存知なかったそうでございますね?」

「…まあね」

マスターと呼ばれた者は、何か嫌な事を思い出したと言うように思わず眉をひそめる。
また別の者がすぐさまそれに気付いて、マスターの側に行き詫びた。

「これは何か不快な気分にさせてしまった様で…申し訳ございません」

「いいの、聞いたのは私の方だし…」







執事養成科。
その名の通り執事を育成する教育機関である。
この学園では昼休みが終わると、学園内に数名の執事達が現れる。
彼等は[執事]を学ぶ生徒達で、昼休みを境に一般生徒達から執事へとスイッチされるのだ。



「タイが曲がってるぞ、メイメイ」

「ああ、すんません…つか、メイメイはやめて下さいよ…小吉先輩」

普通棟から特別棟へ続く渡り廊下に笑い声が響いた。

 
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