お題

□眠いんだ。ごめん。
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匂い


焼ける、匂いがする


ああ、全て焼けてしまった


町も、人も、思い出も


残ったのは




「佐助、佐助!!」




俺を呼ぶ、暑っ苦しいアンタの声だけ




「佐助、目を開けろ!!」



相変わらずうるさいなぁ



“なぁに?旦那”



そう言おうとして口を開けば、声の代わりに血が出た。



「かはっ…!!」



噴き上がった血が、喉に逆流してむせてしまった

旦那は慌てた様に俺の身体を横向きにした

動かされた身体はあちこち痛くて、焼ける様に熱い
心配そうにこちらを見下ろす旦那に何か喋ろうとして


「俺、しぬの?」


不意に出たのはそんな情けない言葉だった


「馬鹿者!!大事無い、大事無いぞ…。今、医者を呼んでおる」


馬鹿者はどっちだお馬鹿さん。 大事無いんだったら何で医者を呼ぶのさ


「旦那、ありがとう、アンタの側においてくれて、ほんと」


なんだろうな
瞼がすごく重いんだ


「佐助、目を閉じるでない!」


耳元で叫ばれ、やれやれと再び瞼を開ける

でも、駄目だ
瞼が重くて重くて仕方ない


「眠いんだ。ごめん」
 

それだけ言って、
静かに目を閉じた。



End.

 
お題配布元DOGOD69

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