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□出来心は春の訪れ
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それは静寂――






日の光が柔らかに射し込み、遠くからは山鳩や鴬の囀ずりが聞こえる。


閑な風景。












しかし、溜め息ひとつ。


政宗は書から目を離し、ぐ、と伸びをする。



空は久々の晴天だというのに、政宗の心は曇っていた。









「つまんね」






畳に散らばったいくつもの紙は、政務に関する重要なものばかり。
政宗はそれをひょいと跨ぎ、自室を後にした。























城門をくぐり抜け、城の周辺をとぼとぼ歩く。
今朝方まで降り続いていた雨のせいで、道はぬかるんでいた。
 




『政宗様、政務はどうなされたのですか』


『本日中に印を要する書が山積みなのですぞ?散歩をなさる暇など有りませぬ』


『お一人で出歩くなとあれ程申し上げたではありませぬか。もう少し一国の殿としての自覚をお持ち下され。もしも貴方に何かあったら…』






いつもならば間違いなくここで小十郎の小言が響くのだが。










「やっぱ、静か…だな」










政宗は肺いっぱいに澄んだ空気を取り込むと、一度空を見上げ、すぐに踵を返した。




 
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