短い歌
□観察日記
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葵兄弟side
軽音部部室。
「ゆうたくん、ちょっと来て」
ひなたはゆうたを窓際に呼んだ。
「何?アニキ」
「あれ見て」
ひなたが校庭の隅を指差す。
ゆうたはひなたが指差した方を見る。
「あれって…」
視線の先には姫宮桃李がいた。
木に隠れながら、チラチラとある方向を見ていた。
その先にはベンチに座っているあんずがいた。
「姫くん、さっきからずぅっとああしてるんだ」
「ええ!?」
ベンチに座り、読書するあんず。
それを見つめる普段以上に愛らしい桃李。
それはまるで……
「恋する乙女って感じ?」
ひなたはニヤニヤしながら言う。
「ゆうたくん、気にならない?」
「………気になる」
好奇心が勝った。