にわか雨
□7.恋愛
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『気に入らない』
そう言われて、髪を切られた。
「っ!」
水季は飛び起きた。
気温は低く、吐く息は白かった。それでも身体は熱く、汗をかいていた。
夢は中学生の頃だった。
1年生の時、放課後、クラスメイトに呼ばれた。
その女子生徒とはあまり話したことがなかった。
だから何故呼ばれたのか解らなかった。
女子生徒に連れられて屋上に行くと、更に知らない生徒たちがいた。
学年が上の先輩たちだった。
先輩たちの顔は険しかった。
話を聞くと、各々好きな人がいるらしい。
否、いた。
意中の人たちは口を揃えて
『水季のような子がタイプ』
と言ったらしい。
水季は困った。
そうは言われても、水季は男子とあまり会話をしない。
そんなアプローチを受けたこともない。
『特にその髪』
その時、水季は初めて気づいた。
相手がハサミを持っていることを。
耳障りな音がした。
直後、激しい雨が降った。