にわか雨

□4.嫌悪
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水季は千秋が嫌いだった。
理由は単純。


「翠をとった」


「……っぷ」

水季が小さなこどもが拗ねるように言うと、あんずは吹き出した。

「っな!笑い事ではないぞ、あんず!」
「ご、ごめん……ふふ」

あんずは謝りながら笑いを堪える。

翠が夢ノ咲学院に入学が決まった時、水季は嬉しかった。

しかし、翠がアイドル科に入ったのには驚いた。
それでも、学科が違えど一緒に過ごす時間はあるだろうと考えていた。

「なのに…」

そこに割って入ってきたのが千秋だった。

水季が知らないうちに翠をバスケ部に誘い、あれよあれよという間に流星隊に入れてしまった。

水季は部活までは許せた。

「翠は背も高いし、体格も良い」
「うん」
「顔だって悪くない」
「…うん」
「声だって澄んでいる」
「……」
「……あんず?」

あんずは肩を奮わせていた。
スクスク笑っている。

「何が可笑しいのだ?」

あんずは涙を拭う。

「水季ちゃんは本当に翠くんが大好きなんだね」
「当然だ!」

水季は胸をはる。

「翠は私のものだ」


「人を物扱いしないで下さい」

突然後ろから声がした。

『!』

水季とあんずが振り向くと翠と智がいた。
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