零落の季節

□8.KANATA
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次の日の放課後、智とあんずは道場に行った。
昨日のお詫びと改めて見学させてほしい旨を伝えた。

紅郎は全く怒っていなかった。
むしろ緊張が原因であり、決して恐怖で気絶したわけではない、ということに安心していた。


(…良かったぁ、紅郎先輩、怒ってなくて)

あんずは中庭、噴水の縁に腰掛けた。

智は道場に残り、見学している。
そのまま裁縫を教えてもらえれば一石二鳥。

しかし………。

あんずはため息をついた。

「出来れば、空手部も避けたかったなぁ…」

またため息をついて空を見た。
すると突然、後ろから制服を引っ張られた。

「え?」

気づくと、水の中だった。
遠くから智の悲鳴が聞こえた。

(何が起きた?)

水から顔を出しても暫く呆然とする。

「あたまはひえましたかぁ?」

のんびりした口調が隣からした。
あんずはゆっくりと顔をそちらに向けた。
今の今まで、彼が、深海奏汰がそこにいたとは気づかなかった。

「…奏汰先輩」
「あんずは、なにをおそれているのですか?」
「…私が、ですか?」

あんずは考える。

確かにこわい。

知らないふりをして、あの人と接していることが。

智が避けていると、バレていることが。

智とあの人が再会した時のことが。

悩みが尽きない。
だから考える。

「だから、私はあのこを護る騎士になります。あの人を騙す道化になります」

あんずは真っ直ぐ、力強く言った。

「たよってほしいですねぇ〜」
「その時はお願いします」

お互い、笑顔で言った。

「あんず先輩ー」

声の方を見ると、智がクラスメイトの翠の手を引いて走って来た。

「あんずー」
「スバルくん」

2人の後ろからスバルも追い掛けてきた。
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