短い歌
□BEST COLOR
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「あら?」
その日、嵐はショッピングモールであんずを見つけた。
あんずは服を見ていた。
それを見て嵐は不思議に思った。
(あんずちゃん、どうしてメンズ服をあんなに真剣に見てるのかしら?)
前、後ろ、袖口、中の布地等、真剣にメンズ服を見るあんず。
そこへ店員があんずに話しかけた。暫く2人は会話していたが、あんずは何も買わず店を離れた。
気になった嵐はあんずを追いかけた。
あんずは他の店でも同じ行動をしていた。
コートに関してはサイズが大きすぎるにも関わらずスポッと試着してみたり、そして鏡の前でくるりと回ってみたり。
あんずの不思議な行動を可愛いと思いながら、いつの間にか楽しんでいた。
しかし、あんずはどの店でも何も買わなかった。
(誰かへのプレゼントかしら?)
プレゼント
メンズ服
メンズ
男?
(お…男!?)
そう言えばお店は若者向けだった。
女の子1人で買い物も納得できる。
(相手は誰!?)
あんずは誰かと電話で話している。すぐ後ろにいる嵐には全く気付かない。
「……うん、中央広場ね。わかった」
通話を終えるとあんずは駆け出した。
中央広場に着くと、あんずはキョロキョロと辺りを見回した。
そして目的の人物を見つけたらしく笑顔になって駆け寄った。
相手は男子だった。
(誰?あの子)
知らない男子だった。
2人は並んで歩く。
ただ並んで歩く。
会話はしているが、腕を組むとか、手を繋ぐとか、そんなことは一切しない。
笑顔も最初だけで、後は淡々と会話をしている。
(何だか、カップルらしくないわねぇ)
嵐はチラリと周りを見る。
休日のショッピングモール。
家族連れも多い中、笑顔で寄り添うカップル達。
微笑ましい光景。
視線を戻すと2人の姿は無かった。