にわか雨

□5.教室
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普通科。

水季は友達と教室を出た。

「今日は何を買うのだ?」
「……実は」
「?」
「水季に紹介したい人がいるの」
「ほう」

友人の知り合いかと、水季はこの時、そう思った。



数十分後。
学院近くの喫茶店。

水季は無表情を保ち、眉間に皺を寄せるのを必死に耐えていた。
向かいに座る相手は人懐っこい笑みを水季にむけていた。

友達に説明を求めようとしたが、友達は『急用ができた』ができたと言って帰ってしまった。

「まさか紹介したい人が、羽風先輩とは思わなかったな」
「あ、俺のこと知ってるんだ。嬉しいなぁ」

薫は嬉しそうに笑みを深めた。

「前々から君と話してみたかったんだよ。でも君、すぐに帰っちゃうしさ」

確かに水季は用事が済めばすぐにアイドル科を出ていく。

「申し訳ないが、私は話すことがない」

水季は席を立とうとした。

「あ、雨また降ってきたぁ」

他の客の声を聞いて、水季は窓の外を見た。
雨が再び降りだしていた。

水季は薫の荷物を見た。
傘は見あたらなかった。

「羽風先輩、傘は」
「学院に忘れた」

水季は席に座り直した。

「雨が止むまでなら、相手をしよう」

出来るだけ笑顔で言った。

「相合い傘とか…」
「断る!」

水季の眉間にシワができた。
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