にわか雨

□3.甘味
4ページ/6ページ


「あまり桃李をいじめないでくれる?」
「いじめてなどいない」


『昨日の仮装した智の写真を私の携帯に送っておくれ』
『と、撮ってないよ。昨日は忙しかったもん』

水季は笑顔を崩さず、桃李を壁に追い詰める。

『嘘をつくでない。とびっきり可愛いのを頼むぞ』
『〜〜〜〜〜』


「助けなかったお主も同罪だ」

桃李から送られてきた写真はあんずとのツーショット。2人とも笑顔で、着ている衣装もはっきりとわかる。

「やはり、恋してる者は撮り方が上手いな」

水季はご満悦で携帯をしまう。

「お主が送ってきたのは、大方、撮ろうとして逃げられた瞬間だろう」
「解ってて怒鳴り込みに来たのかい?」
「それだけではない」

水季は英智を見る。

「そちらのスケジュールを少し聞きたい。近く、雨天中止になるような仕事はあるか?」

英智は目を見開いた。

「最近、雨が降ってない。だから降らす」

きっぱりと言った。
英智はふっと微笑んだ。

「詳しいスケジュールならあんずちゃんに聞いた方が良いよ」
「すまんな」

水季は扉の方に向かう。

「水季」

英智が呼ぶ。

「去年までの君はアイドルのスケジュールなんて気にしてなかったよね」

水季は振り向く。

「そうだったか?」
「幼馴染みの為かい?」

水季は目を見開いたが、すぐに微笑んだ。

「私も年頃ということだ」


その表情はまるで……。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ