にわか雨

□2.出会い
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水季があんずを連れて来たのは学院近くの喫茶店だった。

扉前のボードには
『スイーツフェア開催中』
と書かれていた。
入ると甘い香りが充満していた。

(ゆうたくんとか、苦手そう)

あんずは呑気にそんなことを思った。

店員に案内され、水季と奥の席についた。

「好きな物を頼め」
「でも私、お財布…」

あんずは傘だけを持って教室を出た。
財布も携帯もカバンの中だった。

「気にしなくてよい。支払いは私が持つ」
「ですが…」

そう言いながらも、あんずの目は美味しそうなお菓子に向いてしまう。
水季はクスクス笑う。

「翠がもうすぐ来る。あんずの荷物を持ってな。だから安心するがよい」
「あ、じゃあ…」

あんずは少し安心した。


数分後。

テーブルにはあんずが頼んだチェリーパイの他にパフェやケーキ、タルト等が並べられていた。

「…おぉ」

水季が店員に

「一通り頼む」

と言ったのには仰天したが、承けた店員も

「かしこまりました」

と笑顔で対応した。



「い、いただきます」

あんずはチェリーパイを一口食べる。

「美味しい」
「アップルパイとレモンパイも絶品だぞ」

そう水季は言うと、それぞれ半分に切ってあんずの前においた。
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