にわか雨
□PROLOGUE
3ページ/3ページ
智と英智が帰ると水季は縁側に座った。
短刀を鞘から抜き、刀身を眺める。
「これで、もう少し太れば良いが」
水季は智の痩せた身体を見た時、一瞬言葉を失った。
あれでも太った方らしい。
それでも健康的とは言えなかった。
(あれでも有名人のこども、か)
水季が脱衣室で刀身を向けた祓った『黒い影』。
それは智にのし掛かるように憑いていた。
恐らく、智の存在を知る各業界の思念。
水季が驚いたのは、それでも智自身が清らかだったこと。
心も瞳も『黒い影』の影響をあまり受けていなかった。
「天祥院殿のおかげか」
『箱庭』に閉じ込めた。
英智はそのことを後悔していた。
だが、結果としてそれが『黒い影』の影響を最小限にしていたかもしれない。
「智は学院ではどう過ごしておるのかのう」
水季は携帯を出し、ある人物にメッセージを送った。
『明日の放課後、そちらの科に行く。出迎え宜しく♪』
即返信が来た。
『嫌です。来ないでください』
「っぐ」
別の人物に送る。
『お待ちしております』
「よしよし。やはりあんずは良い奴だ」
水季はにんまりした。
To be continued.